農業のイノベーションを考える-先行事例や論文・政策からイノベーションのヒントを探る-

スマート農業 農業イノベーション

「日本の農業分野は第一産業を筆頭にイノベーションが遅れている」とこれまで言われてきました。しかし近年は、技術革新が進み農業のイノベーションも着実に進んでいます。

毎年開催される農業の最先端技術が揃うイベント「アグロ・イノベーション(東京ビックサイト)」では、数々の企業が最新技術を用いた商品を展示し話題を呼んでいます。

そこで本記事では農業のイノベーションの現在について、論文や具体的な事例を引用したり、政策との関係性を交えたりしながら紹介・考察していきます。農業のイノベーションで解決していくべき「日本の農業がかかえる課題」についての以下の記事も、あわせてご覧ください。

農業がかかえる課題/問題と解決策を知る-いま日本の農業で何が起きているのか-

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農業イノベーション 注目は「スマート農業」

農業のイノベーションで昨今、最も注目を集めるのが「スマート農業」です。スマート農業とは「ロボット、AI、IoTなど先端技術を活⽤する農業」のことで、作業の自動化、データの活用、情報共有の簡易化などを達成できるといわれています。スマート農業については以下の記事をご覧ください。

→【5分でわかる】スマート農業とは?例や現状・課題を交えて簡単に解説

またスマート農業の中で、主に圃場の状況を撮影録画したり、計測したりして集めたビッグデータを解析し効率的に栽培管理を進める方法などもあります。これは「精密農業」とも呼ばれています。

上記の具体的事例としては山梨県IoT推進ラボの農業分野のワーキンググループである「山梨市アグリイノベーションLab」がすすめるシャインマスカットのハウス管理でデータを活用したものなどがあります。

株式会社WorkVisionが2020年秋にリリースした鳥獣対策地域応援アプリ『.Wanna!(ドットワナ)』も注目です。これは既存の鳥獣対策をそのままに、都市部協力者をアプリで増やすもの。市町村の枠を越えた鳥獣対策の広域連携が可能となり、地域活性化も含めた更なる効果が期待できます。

農業のイノベーションと起業をうながすためには-政策と市場環境-

OECD貿易・農業局エコノミストの木村伸吾氏の資料「OECD政策レビュー:日本農業のイノベーション」によれば、農業のイノベーションと起業を促すためには、次のような政策や市場環境の構築が必要です。

1つ目は、より経営の自由度を高めることによる農家のイノベーション喚起です。具体的には以下のような方法が想定されます。

  • 品目特定的ではない生産者支持へのさらなる転換
  • 農家による通常の経営リスクの管理に対する自己責任を強化
  • 国内生産と海外現地生産を組み合わせた農産物・食品輸出に対するより需要主導的なアプローチ

2つ目は、「資材、サービス市場におけるJA以外の民間プレーヤーの強化」です。JAの存在にはメリットデメリットが存在しますが今後イノベーションを喚起していくうえではJA以外のプレイヤーの強化は必須です。裏を返せばJAも今のままの体制ではよくないといえます。

  • 金融補助における政府の役割を減らし、民間銀行の役割を増やす
  • JAグループと他の農業資材及びサービス供給事業者との間の公平な競争条件を確保
  • 都道府県の普及事業は公益的な分野に集中させる一方、民間の技術普及サービス事業者の役割を拡大する

農業のイノベーションについて研究した論文を紹介

農業のイノベーションについて研究した論文として東京工業大学 高木氏らの論文「農業のイノベーションモデル仮説と検証」があります。

この論文では特殊性のためにこれまであまり研究されてこなかった農業のイノベーションについて、14事例の分析を通じて農業のイノベーションモデルの仮説を立てて検証しています。

モデルは著者らが独自に構築したDISTモデルを採用しています。DISTとは以下に示す4つの用語の頭文字をとっています。

  • Demand Push:需要・ニーズ
  • Instinct Push:健康本能追求
  • Technology Pull:農産物提供能力
  • Social Pull:社会的要請行動

研究の結果、農業のイノベーションの出発点を上記の4つに分類することで、初期段階で次のステップの課題を明らかにし、農業のイノベーションの戦略立案に活用できることがわかりました。

Dの場合は供給体制の構築が成功の鍵となります。Iの場合はIをベースにした技術とニーズの獲得へと進みます。Sの場合は地域課題の緊急性が高いケースがほとんどのため、早期にニーズをつかむことが重要です。Tの場合は早期から顧客との関係を構築し、その技術特性やメリットが活きる顧客とニーズを明らかにすることが成功の鍵です。

もしこれから農業分野でイノベーションを起こしたいと考えている人は、自分たちのモデルがどのケースに当てはまるのか確認したうえで、先行事例を参考にしていくのがいいでしょう。ここでは論文のほんの一部しか紹介できていません。全文はこちらからご覧ください。

農業のイノベーションの推進に自治体で取り組む事例も

農業のイノベーションに取り組むのは民間だけではありません。高知県は農業イノベーション推進課を設け、農業のイノベーションを県単位で推進しています。

農業イノベーション推進課が具体的に行っていることは園芸農業の振興に係る企画立案・園芸産地の育成・園芸農作物の専門項目に関する高度先進的な技術及び知識関連・農業分野におけるAI及びIoTの技術関連・次世代型こうち新施設園芸システムの推進・農業クラスターの推進などさまざまです。

2021年1月20日にはJA高知県、高知大学、高知工科大学、高知県立大学、IoP推進機構、高知県工業会、高知県IoT推進ラボ研究会等による産学官連携のもと、デジタル技術を活用した農業のためのプラットフォームとなる仕組みの核となるデータ連係基盤「IoP(Internet of Plants)クラウド」を始動しました。

「IoPクラウド」とは、IoTで接続した農業ハウス内の機器のデータや、県全体にわたる農産物の個々の出荷に関するデータなどを、リアルタイムで一元的に集約するクラウド型のデータベースシステムのこと。

例えば農業ハウス内の温度、湿度、CO2濃度、カメラ映像、機器の稼働状況などのデータのほか、JA グループ高知が持つ農産物出荷量のデータなどがアルタイムでアップロードされ、互いに関連づけられてデータベースに集約されます。

これらのデータを最大限に活用することができれば、生産者は要因分析、環境制御ノウハウの磨き上げ、グループでの情報共有、遠隔での監視および制御、自動制御などを行うことができ、自身やグループの技術向上を実感・共有しながら、これまでより戦略的に、効率よく収穫高を上げることが可能となるのです。

農業のイノベーションについてより深く知るためにおすすめの本

本記事では農業のイノベーションについて浅く広く解説してきました。本記事を読んでより深く農業のイノベーションについて知り学びたいと思った方には、下の本をおすすめします。ぜひ買って読んでみてください。

この本は世界的に成長が著しい「フード&アグリテック」を次世代ファーム、農業ロボット、生産プラットフォーム、流通プラットフォーム、アグリバイオの5分野に区分けし各分野の市場動向と先進事例、2030年までの市場規模予測と事業展望を示した1冊です。

農業の課題を解決するために注目される「スマート農業」について網羅した1冊。スマート農業に興味関心がある、スマート農業を実践したい、自治体の政策にスマート農業を盛り込みたいというスマート農業を知りたい全ての人におすすめの本です。

最後に-コロナ禍に注目を集めたオンラインプラットフォーム「食べチョク」-

本記事では農業のイノベーションについて多角的に考察してきましたが、最後に1つ紹介したい事例があります。コロナ禍に注目を集めた農業のイノベーション事例「食べチョク」がです。食べチョクは消費者と生産者を直接つなぐプラットフォームで、無料で誰でも登録でき売れたら販売手数料を食べチョクに支払う仕組みなので導入も簡単です。

KAYAKURAでは食べチョクが話題となる以前、2020年頭に食べチョクを運営する株式会社ビビットガーデン代表 秋元氏の講座の模様を記事にしています。農業のイノベーションのうちオンラインプラットフォームについて興味関心のある方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

参考資料
木村伸吾, 「OECD政策レビュー:日本農業のイノベーション-生産性と持続可能性の向上をめざしてー」.
高木栄, 赤松美里, 2010, 「農業のイノベーションモデル仮説と検証―イノベーション推進のための戦略立案の指針として―」『VENTURE REVIEW No.15』39-48.
高知県, 2021, 「Society5.0 時代の新しい農業を実現する高知県「IoP クラウド」が始動」.
高知県, 農業イノベーション推進課.

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最後に、効率よく学ぶために本を電子版で読むこともオススメします。

Amazonプライムは1ヶ月無料で利用することができますので、非常に有益です。学生なら6ヶ月無料です。

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数百冊の書物に加えて、

  • 「映画見放題」
  • 「送料無料」
  • 「書籍のポイント還元最大10%(学生の場合)」

などの特典もあります。社会や地域の課題を冷静に正しく分析する力は、読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、気になる方はぜひお試しください。

この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.