六次産業化とは?定義や先進事例、メリット、課題などを専門家が解説

六次産業化とは

農家の所得向上の手段として注目されている六次産業化という言葉を耳にしたことはありますか?六次産業化は、第一次産業である農業に従事する者が、二次産業である加工等、三次産業である直売まで行うことです。

農家が食品産業やレストラン等に対して直接販売のみを行っている事例も六次産業化といわれることもありますが、この記事では対象としません。農業の流行トピックの1つである六次産業化について、この記事では六次産業化の定義、実践の仕方やそのメリットを具体例を交えながらお伝えします。

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六次産業化とは?定義を解説

六次産業化とは「一次産業として農林漁業と、二次産業としての製造業、三次産業としての小売業等の事業との総合的かつ一体的な推進を図り、地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す取り組み」と農林水産省によって定義されています。

一言で言うと、農家が多角化することであり、農家活動のうち、生産以外の部分も農家が行うことです。

具体的には、農産物の加工や、消費者や食品業者、飲食店への直接販売、観光農園と農家レストランと農家民宿のことを指します。

消費者の飲食費支出約80兆円(2003年)のうち、生産者の懐に入るのは約12兆円に過ぎません。これが六次産業化が注目される理由の一つとなった農林水産省のデータです。

六次産業化は英語で何という?

六次産業化は、英語で”sixth industrialization”といいます。または”primary producer’s diversification into processing and distribution”とも表現できます。

後者の訳は、一次産業者の二次産業と三次産業への多角化という、六次産業化の意味が伝わりやすくなっています。

六次産業化の先進事例を紹介

岡山県新見市のトマト農家の事例

岡山県新見市のトマト農家は、最高で一本5,400円で売れるトマトジュースを販売しています。「(前略)こだわりの農法で味を追求して育てた究極のトマトがあるからこそ、ジュースの価値が高まる」との言葉に、品質への自信がにじみ出ています。

トマトの生産だけでなくトマトジュースを生産しようと思ったきっかけは、代表の奥さんのお母さんの自家製のジュースの味に感動したことです。味や品質にこだわるようになったきっかけは、大手企業との専属契約の評価基準を満たすようなトマトが生産できなかったことであり、高品質なトマトを生産できるようになるまでに約10年もの年月を要しました。

長野県安曇野市のワイナリーの事例

ワインブドウ生産とワインの製造を一貫して行っている長野県安曇野市のワイナリーがあります。

特徴は、中心となる2人の経験にあります。手がけたワインがコンクールで入賞した経験、ソムリエとして働いた経験を持ち、ともにワインのプロだということです。2人が切磋琢磨し合い、それぞれのこだわりが反映されつつもニーズに答えられるのが強みです。

参入にあたって、技術提供や客観的に味を判断してくれる「師匠」のような人を持つことが大切だと語っています。

六次産業化でワインの製造を行うには、必ずしも自らのワイナリーを持つ必要はありません。生産したワインブドウで、他のワイナリーに委託醸造を行うことができる場合が多いからです。

山梨県や長野県、北海道ではワインブドウ対象の新規就農が行いやすい環境が整えられていますし、ワイナリーの建設に対する給付金が受けられる場合もあります。

六次産業化のメリット

六次産業化のメリットは売り上げが増えることです。例えば、育てた果物をジャムにして売れば高価で売れます。果樹園を観光農園として果物狩りの体験を提供すれば、体験代の分の儲けが出ます。

農林水産省のデータによると、5年間事業を継続した認定事業体(のちほど解説します)のうち約75%が収入が増加したと解答しており、一事業体あたり、売上高は4600万円平均して増加しています。

六次産業化は、どんな商品が市場で求められているかを意識するきっかけにもなるでしょう。小規模で試み、その感触によって六次産業化の規模拡大を行うか、農業部門の規模拡大を行うかを決めるのは1つの手です。

冬など農閑期にも収入を得ることができるのも六次産業化のメリットとして挙げることができます。ジャムなど長期保存ができる加工品の生産を行うとよいでしょう。

六次産業化を推進するうえでの課題

一点目は金銭面に関してです。大規模に事業を行うのであれば、加工施設や飲食店建設に要する費用を考慮しなくてはなりません。雇用も必要になってきます。黒字化には複数年を要するということも指摘されています。

二点目は経営の不安定度が増すということです。加工品にせよ農泊にせよ価格を自ら決定しプロモーションを行うことになります。

六次産業化に取り組む際に知っておきたい補助金

六次産業化認定事業:総合化事業計画を策定して国の認定を受けることができれば、補助金を受けることがで きます。補助金は「食料産業・六次産業化交付金」であり、新商品開発・販路開拓に対する交付金です。新たな加工・販売等へ取り組む場合の施設設備の導入も対象となります。

経営に関する情報やノウハウが知りたいと思ったら、都道府県に設置される六次産業化プランナーの力を借りることをおすすめします。彼らから助言や経営改善の取組への支援が受けられます。

最後に-六次産業化をより深く知るためにおすすめの本-

六次産業化とは

本記事では六次産業化の基本のキについて解説してきました。この記事を読んでもっと六次産業化について深堀したいと思った方には以下の本がおすすめです。ぜひ買って読んでみてください。

『地域を支える「農企業」』小田 滋晃, 横田 茂永, 川﨑 訓昭

本のテーマは、「農企業」がいかに農業経営をおこない、地域との関係を築いているか、多様な姿を掘り起こして未来の農業を考えることです。この本を読むと、売り先や雇用者だけでなく地域全体でつながりをつくることが経営にも影響するということを実感できると思います。専門用語は用いられておらず、見出しも多く読みやすいです。

『農の6次産業化と地域振興』熊倉 功夫, 米屋 武文

六次産業化の実施方法が経営の面からだけでなく、市場の動向も示されながら記されている専門書です。個別の事例から理論的なところまで広く網羅されています。経済学の知識が必要な部分もわずかにありますが、多くの部分は読みやすいと思います。別の書籍で基本的な部分を学んだ方が知識を深めるのに約立つと思います。

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最後に、効率よく学ぶために本を電子版で読むこともオススメします。

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この記事を書いた人

塩川 大貴

1996年長野県生まれ。明治大学農学研究科農業経済学専攻所属。祖母から町の至るところでホタルを見ることができた昔の話を聞いて、その実現を目指し環境経済学を学べる学科に進学。理想と現実のギャップに打ちのめされる…農家の経済活動を計量的に分析する手法を学んでいる。計量一本でやってきたことへの反動で、個々の事例に注目するのが自己トレンド。