テレワークとは?メリットデメリットを実践者がわかりやすく解説

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために中小大手問わずテレワークが推進されています。。日清食品ホールディングスが3000人の従業員、電通が本社勤務の5000人に原則テレワークを要請するなど一気に拡がりをみせています。

職種によってはこれまでも実践されてきたテレワークですが、コロナウイルス関連のニュースで初めて聞いた方も多いはず。そこで今回はテレワークの経験があり現在はテレワークで仕事を発注する側でもある筆者が、実際の経験をもとにテレワークの意味、メリットデメリット、向いている人向いていない人などを解説していきます。

テレワークの推進で広まる「ビデオ通話」についての間違った常識を覆す記事はこちら →ビデオ通話より音声通話・文章のほうが正確に情報は伝わる-コロナで外出自粛中のテレワークの極意-

テレワークとは?「離れた場所(tele)で働く(work)」という意味

テレワークとはネット環境や通信機器を活用して場所や時間の制約を受けることなく働くワークスタイルを指します。離れた場所という意味を持つ「tele」と働くという意味を持つ「work」を合わせた造語です。

諸説ありますが1970年代石油危機と環境汚染が進んだ時代に消費エネルギーを減らすことと大気汚染を緩和することを目的にアメリカではじめられたといわれています。日本では1990年代に情報通信環境が整備されたことと女性の社会進出が叫ばれたことでひろまりはじめました。

近年は地方移住とテレワークのセットで地方に住みながらも都会の仕事を続けたり、地方自治体がテレワークを推進し潜在的な労働人材の労働を促進するしたりと働き方改革・地方創生などとも関係する文脈で注目を集めてきました。地方と都会で仕事をする筆者の体験をまとめた記事を参考に貼り付けます。

テレワークができる人は「自己管理能力が高い人」

「テレワークしてください!」といわれたとき、大きく2つに人の思考は分かれます。1つ目は「やった!自分のペースで自分がやりたいように仕事を進められるぞ。ちょっと会社のペースは合わなかったけど自分で自分に合った働き方なら高いパフォーマンスも発揮できる!」というケース。2つ目は「やった!テレワークなら上司に監視されないし仕事中もなまけられるから楽だ!少しだけ働いてあとは遊んでようかな~」というケースです。

幼少期~大人になるまでの間に大人や上司に指示されないとやるべきことは分からない=「管理されないと自己を律せられない」癖がついてしまった人は、テレワークで通常の仕事量~高いパフォーマンスを発揮することは困難です。反対に子どもの頃から主体的に学び行動できる環境で育ってきた「自己管理能力が高い人」は、自分のペースで仕事がすすめられるためストレスが軽減されテレワークで高いパフォーマンスを発揮できます。

コロナウイルスによって導入が一気に加速したテレワークですが、この数週間の結果をみればテレワークを導入した企業がどの程度「主体的に自分で行動できる社員」を抱えているかがわかるといっても過言ではありません。業務形態によってテレワークが合う合わないはあるものの、テレワーク時の社員のパフォーマンスが通常通り~高く不平不満が少なければその企業は指示待ちで管理されないと動けない人材が少ないといえます。

日本の教育システムは「管理して一律に育てる」方針が強かったため、テレワークに対応できない人材が多くいるのではないかともいわれています。コロナウイルスによって広まったテレワークの導入は、日本人がどの程度主体性があるのか・どの企業がどの程度主体的な人材を抱えているのかを測る大規模な社会実験といっても過言ではないのかもしれません。これからの教育を考えるうえで示唆的な長野県池田町で行われた対談記事はこちら↓

テレワーク導入のメリットデメリット-経験者だからわかることがある!-

テレワーク導入のメリット

1つ目のメリットはコロナウイルスの拡散防止と関連する「人が移動することで発生する害の減少」です。1970年代にアメリカでテレワークが広まったのも排気ガスによる二酸化炭素排出量を少なくすることが理由の一つでした。テレワークの導入によって車移動の減少や今回のようなウイルスの拡散防止などの効果が期待されます。ただ交通機関や人が移動することで収益を出す業界もあるため悩ましい点でもあります。

2つ目のメリットは「好きな時間に仕事ができる」ことです。筆者はとても朝が弱いため、理想は昼前に起きて午後から夜まで仕事をするライフスタイルです。Nature Communicationsに2019年に掲載された論考によると、朝型か夜型かは351個の遺伝子によって規定されるという結果が出ています。午前のほうが仕事が捗る人もいれば、午後のほうが捗る人もいるし夜のほうが捗る人もいる、人はそれぞれ調子がいい時間と悪い時間は異なるという多様性を踏まえると、朝9時に出勤して夕方6時に強制退社というスタイルよりも各々が高いパフォーマンスを発揮することが期待できるのです。

1日の時間の使い方のみならず、より長期間でみても好きな時間に好きな量の仕事ができることは幸福をもたらします。子どもが風邪をひいた人、インフルエンザにかかった人、親の介護が始まりこれまで通り出勤できなくなった人、学業のスキマ時間で働きたい人、それぞれが最も適した時間に適した働き方がテレワークだとできるのです。

テレワークの導入によるメリットと強くリンクする「複業」「ワーケーション」などをキーワードに大手町で開催されたイベントのレポート記事はこちら↓

テレワーク導入のデメリット

企業もしくは仕事を発注する側からすると、テレワークの最大の懸念事項は「業務の過程が管理できないこと」といえます。実績主義・結果主義ではなく過程や手段も重要視する企業では楽をしないように結果としてノルマを多くしてしまい、労働時間と仕事量のバランスが崩れることがあります。

その結果テレワーカーは「配分された仕事しないと!ノルマがこなせない自分の働き方や管理能力は問題だ」と思い労働時間が長くなってしまうのです。テレワークによって労働時間が長くなることは問題であり、もともと仕事の単価が低くなりやすいテレワークにおいては時給の低額化へとつながります。

その他に考えうる企業もしくは仕事発注者側のデメリットとしては、同僚との接点が少なくなることによるリアルな学びの機会や教育の機会の減少などが挙げられます。

筆者はWebサイトのライター業務をテレワーク形式で発注していますが、テレワークの導入で難しいなと感じる部分は「共通認識の形成」「偶然性の減少」です。記事を書いてもらう際にWebサイト全体で統一したいルールやフォーマットがありますが、全てを明文化できるわけではありません。文章では伝えづらくオンライン通話でも細かいニュアンスが伝わらないときにテレワークの難しさを感じます。

2つ目の「偶然性の減少」も1つ目と根幹は同じです。テレワークで発注する場合には受託する方に1度も会うことなく仕事を進めるケースがよくあります。面接時にオンラインで通話はするものの最低限の会話しかしないため、雑談やしぐさから人柄がわかったり、思わぬ話の脱線でいい事業が浮かんだりすることは少なくなります。

ビジネスにおいて合理化だけを進める非合理な部分が自ずと発生するため、程よい偶然性を大切にしたい一方テレワークでは偶然性は発生しにくいことを感じています。

まとめ-テレワークはコロナウイルスに関係なく広まる可能性を持つ働き方-

個人的にはキッカケはコロナウイルスですがテレワークの認知度が高まり導入が進むことは、働き方改革や新しいライフスタイルの広がりに伴い良いことだと思っています。よりテレワークが広まるためには「過程や手段を管理する仕事の在り方」から「結果重視の仕事の在り方」に変えていく必要があります。

コロナウイルスの拡散防止という理由がキッカケではありますが、今後テレワークがどのように広まり社会に浸透していくか注視していきましょう。KAYAKURAではテレワークを含むさまざまな働き方についての記事を掲載しています。

KAYAKURAが株式会社ふろしきやと共同で行ったワーケーション・テレワークに関する調査結果を2020年12月に公開しました。興味関心のある方はこちらのページをご覧ください。

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この記事を書いた人

Masato ito

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター研究員/講師。長野県出身。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科、日本学術振興会特別研究員を経て2024年より現職。専門は地域社会学・地域政策学。研究分野は、地方移住・移住定住政策研究、地方農山村のまちづくり研究、観光交流や関係人口など人の移動と地域に関する研究。立命館大学衣笠総合研究機構客員研究員。武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員。日本テレビDaydayやAbema Prime News、毎日新聞をはじめ、メディアにも多数出演・掲載。