近年、注目度が高まる「ワーケーション」ですが、いきなり個人で実践したり企業で導入したりするのは勇気がいりますよね。そこでおすすめしたいのが地方自治体や地方の民間業者が実施する「ワーケーション体験会」です。
あらかじめ用意された行程に沿いつつも自由時間があるので、ワークとバケーション両方を安心して体験できます。また地元のスタッフの方が案内してくださるので、観光客では訪れられない名所やお食事処、楽しみ方を教えてもらえます。
今回、筆者が参加したのは長野県千曲市のワーケーション体験会。この記事ではワーケーション体験会の模様を時系列に沿って伝えていきます。
実際にワーケーション体験会に参加して感じた「ワーケーションの魅力」と「ワーケーション体験会ならではの魅力」について詳しく掘り下げていくので、皆さんのワーケーションへのハードルを下げるものになれば幸いです!
ワーケーションとは?
ワーケーションとはWork(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語で近年その認知度が急速に高まっています。明確な定義は決まっていませんがJTB総合研究所によると「ワーケーションとはリゾート地や地方等の普段の職場とは異なる場所で働きながら休暇取得等を行う仕組み」を指します。
日本で他企業に先駆けてワーケーションを導入した日本航空の定義と目指すところは以下のように説明されています。
「国内外のリゾート地や帰省先、地方などでテレワークを実施します。休暇先(旅先)で仕事をするという新たな働き方により、早朝や夕方以降の時間を社員が自由に過ごすことで、業務への活力につなげることが狙いです。また、ワーケーションにより、旅行の機会を増やし、家族と過ごす時間が増えることが期待されます。さらに、地方で開催されるイベントなどに積極的に参加することで地域の活性化の一助としてまいります。」
ワーケーションについてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
長野県千曲市とは?
千曲市は長野県の北信地域に位置する人口約6万人の自治体です。県庁所在地である長野市からは電車で約15分、長野県第三の自治体で真田丸やサマーウォーズで知られる上田市からは電車で約20分で来られるアクセスの良さが魅力。東京駅から新幹線と在来線を使って約1時間30分、高速のインターも街中にあるので首都圏からのアクセスも良好です。
日本三大車窓の1つとして知られる姨捨駅からの夜景や、古くから多くの歌に詠まれてきた姨捨の棚田、戸倉上山田温泉などが観光スポットとして知られています。2020年にはこれらのコンテンツが評価され「月の都」として日本遺産にも登録されました。
ワーケーション体験会に参加!
筆者が参加したのはこちらのワーケーション体験会。主催は長野県リゾートテレワーク事業補助対象候補者に選ばれている千曲市の株式会社ふろしきや 田村英彦さん。田村さんは3年前に東京から長野県千曲市に移住し、現在はまちづくりのマネージメントを手掛け日常的にテレワークで仕事もしています。
千曲市のワーケーション体験会は昨年度に引き続き2度目。コロナ禍の実施ではありましたが県内外からおよそ10名が参加。兵庫県から来たIT系企業の代表を務める方は昨年度に引き続き2度目の参加ということで、回数を重ねることでファンが生まれている様子を目の当たりにしました。
ワーケーションを実践する場合、毎回新しいところに行きたいタイプの人と、特定の気に入ったところに定期的に通うタイプの2つに大別できます。前者は観光客よりの関係人口を増やすことにつながり、後者は移住者よりの関係人口を増やすことに繋がります。実施する自治体が「どんな人・企業と、どのようなカタチでつながりたいのか」で、提供するコンテンツも変わることがわかります。
昨年の千曲市のワーケーション体験会に参加した人の中には、その後、千曲市に移住した方もいました。昨年は参加者としてワーケーションを体験し、今年は受け入れ側地域でワーケーション事業に参加しているとのことで、ワーケーションが移住者増にリアルに結びつく可能性を感じました。
お寺でワーケーション
ワーケーションというと近年はコワーキングスペースやワーケーション用の施設を自治体や民間事業者が建てることが多いですが、千曲市のワーケーションは一味違います。拠点がないという一見するとマイナスな要素を「自然を満喫できるさまざまな場所で仕事ができる」というプラスな要素に変えているのです。
1日目最初、参加者同士の自己紹介後は、なんと長楽寺というお寺!でワーケーションしました。普段は写経や地域の人の集まりに使われる場所を有効活用し、窓越しに市街の風景と緑の木々を眺めながら作業。一風変わった仕事環境ですが、草木の香りや虫の声が自然と感じられリラックスして仕事ができました。
現代社会では「お寺」に行く機会がそもそもあまりありません。さらに都市に暮らしていると自然に触れる機会もあまりありません。「お寺」×「自然」という非日常を掛け算した環境は、まさに観光地としてコンテンツ力の高い千曲市だからできることだと感じました。
棚田でワーケーション
お寺につづいて、こちらではなんと「棚田」で仕事!ここ千曲市姨捨の棚田は「田毎の月」等と呼ばれて名高い美しい棚田です。棚田としては全国で初めて国の名勝に指定され 日本の棚田100選にも選ばれている人気スポット。夜は千曲市から長野市へと広がる善光寺平の夜景を撮影できる絶景スポットとしても知られています。
希望した参加者には電波強めのポケットWi-Fiが支給されたので、周りに民家も電線もない棚田の真ん中でも何不自由なく仕事に集中できました。地元の農作業している方が不思議そうな目で見ていましたが、新しく柔軟な働き方の存在に地元の人が触れる棚田でのワーケーションという機会は、閉鎖性の高い地方地域の視野を広げる可能性を秘めています。
参加者だけでなく、実は地域にもさまざまな形でプラスな影響を与えている、これも拠点が無いことをプラスに変える千曲市のワーケーションならではの特筆すべき点です。
夜はゲストハウスで交流会
夜は地元の「姨捨ゲストハウスなからや」で交流会。企業でのワーケーションは同僚との交流がメイン、個人で来ると他の人との交流機会は少ないですが、体験会だからこそ実現した多様な参加者での刺激的で楽しい時間でした。普段話すことのない他業種の方との交流は創造性を豊かにしてくれます。
意図的に交流する相手と自身の身を置く環境を変えることは、偶発性を生み出します。これはアメリカの社会学者M, グラノヴェッターが「弱い紐帯」と表現したもので、固くなった価値観や狭くなった選択肢を広げる効果をもたらします。イノベーティブな発想が求められる現代社会において、ワーケーション体験会にはそんな機能もあるのです!
これは二地域居住・二拠点居住にも同じことが当てはまります。興味関心のある方は以下の記事をご覧ください。
2日目の朝はゆったりとした交流からスタート
普段、多くの人は仕事に行く前にバタバタと準備をして満員電車や数十分の車通勤を経て時間ギリギリに会社や現場についていると思います。ワーケーションとなると、旅行気分なので意外と早い時間に自然と目が覚めます。通勤やバタバタとした準備の必要が無いので、2日目はゆったりとした朝を迎えられました。
他の肩も旅行気分なので自然と朝早くに目が覚め、集合時間の30分前にはこの写真のように外で談笑が始まっていました。1度これを体験すると「普段の、あの朝は何なんだろう?」と馬鹿馬鹿しくなってしまうかもしれません。
サイクリングで街を散策してから仕事へ
千曲市は自然体でサイクリングに力を入れています。2日目の朝は棚田の上にあるゲストハウスから、棚田の下にある市街地の戸倉上山田温泉地域までサイクリングで風を感じながら移動しました。普段は苦痛な通勤も、サイクリングで棚田を駆け抜けられるのなら楽しい時間になりますよね!
千曲市は2019年の台風19号で甚大な被害を受けましたが、一部溢れた千曲川に沿って南北数十キロのサイクリングコースが整備されています。これは県の事業で整備されたサイクリング専用ロードで長野県内でもこれほどきれいな道が長い距離整備されているところはまだあまりありません。自転車好きがワーケーションするなら千曲市はベストな環境であること間違いなしです!
街中には、公共施設やコンビニなどいたるところに自転車を停めておくスタンドが設置されているので、安心して自転車で街巡りが楽しめます!
昼は地元の人のみが知る限定ランチをいただく
ワーケーションの楽しみといえば地元の食材をつかった美味しいお食事!この日の午後は千曲市戸倉上山田温泉地域の大正時代創業の老舗旅館「有田屋旅館」で、地元の人のみが知る、最近デリバリーサービスで大人気のローストビーフ丼をいただきました。
このローストビーフ丼は普段、地元の人でもなかなか食べられない一品で、今回ワーケーション体験会参加者のためだけにつくってくださいました。ワーケーション体験会のような自治体や地元の人が主催する企画に参加することで、個人や企業で巡り合えない地元の逸品と出会える確率はグッと高まります。
地元の美味しい料理をいただけるのがワーケーションの魅力、そして個人や企業で行ってもなかなか出会えない地元の逸品に出会えるかもしれないのがワーケーション体験会の魅力なのです。
夜はディープな戸倉上山田温泉街を散策
夜は戸倉上山田温泉で温泉に入って、飲んで、街歩き!昼間とは全く違う姿を夜になると見せる戸倉上山田温泉は、大人の遊び場であり古き良き温泉街の姿をいまの時代に残す街です。
人生で初めて常設の射的屋さんを見つけました。まるでタイムスリップしたかのような温泉街を楽しめているのもワーケーション体験会に参加したからこそ。個人で来ていたら絶対に入らないようなディープな裏路地を案内してくれる地元の人がいるからこそ安心して「バケーション」が楽しめました。
千曲市ワーケーション体験会2020年第2弾は9月~10月に実施予定!
千曲市ではワーケーション体験会を2020年9月~10月頃に実施する予定です。また千曲市ワーケーションの魅力を首都圏在住者に発信するオンラインイベントも8月~9月頃に実施されます。KAYAKURAでは千曲市ワーケーション情報を定期的に発信するのでぜひご確認ください。そしてぜひオンラインイベントとワーケーション体験会第2弾にご参加ください!