新型コロナウイルス感染拡大防止のため注目された在宅勤務やリモートワーク。日本型の働き方を変えることになるのでは?と期待をもって語られていたが、昨今の通勤者の数をみているとどうも在宅勤務やリモートワークはそこまで現在は行われていないような気がする。
東京商工リサーチは「新型コロナウイルスに関するアンケート」と題し2020年6月29日~7月8日にインターネットでアンケートを実施。有効回答1万4,602社を集計、分析しコロナ禍の働き方や事業状況について調査した。
調査の結果、感染防止で導入が広がった在宅勤務やリモートワークを「現在、実施している」と回答した企業は31.0%にとどまった。また「実施したが、現在は取りやめた」と答えた企業は26.7%となり、約半数の企業がビフォーコロナに戻っていることがわかる。
コロナ禍に拡大した在宅勤務やリモートワークは現在どうなっているのか?この記事では東京商工リサーチの調査結果をもとにその実態を明らかにしていく。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満や個人企業等を中小企業と定義した
コロナ禍に注目されたテレワークなどについて初めに概要を押さえておきたい方は、こちらの記事をご覧いただきたい。
→テレワークとは?メリットデメリットを実践者がわかりやすく解説
→テレワーク・リモートワーク・在宅ワークの違いと意味をわかりやすく解説!
在宅勤務・リモートワークをいまも実施する企業は31%
6月時点の調査で在宅勤務を現在も実施していると答えた企業は31%にとどまった。一方、実施していたが取りやめたと答えた企業は26.7%に登り、経済活動の段階的な再開に伴い、勤務形態もビフォーコロナに戻りつつあることがわかる。
コロナによって加速的に広まった在宅勤務やリモートワークだが、そもそもこれらの新しい働き方はコロナを乗り越えるための働き方ではない。毎日1時間以上満員電車に揺られ通勤、夜遅くに帰るころには子どもは寝ている、毎日多くの人が排気ガスを吹かせて渋滞を移動、そんな働き方は本当に人間らしい働き方だといえるのだろうか?
在宅勤務やリモートワークは、本来、人間らしい働き方=持続可能で幸福な働き方を実現するための形態である。しかしコロナによってブームとなり、コロナが落ち着いたから元の働き方に戻そうでは本末転倒である。選択肢の複数性をコロナ後の維持し続けることは重要であり、そのための努力も企業はする必要がある。
安易に何事も無かったかのようにコロナ前に戻るのではあまりにももったいないし、成長が無い。7月8月の調査ではどの程度現在も実施している企業が存在するのか、注目である。
中小企業の47.6%がコロナ以降、1度も在宅勤務やリモートワークを実施していない
在宅勤務やリモートワークの実施について、企業規模別にみると現在も実施しているのは大企業が55.2%、中小企業では26.1%となった。大企業と中小企業ではおよそ倍近くの差があり、社内インフラの整備、人員充足度など、業務オペレーションの違いが背景にあると考えられる。
またコロナ以降1度も実施していない企業割合も大企業が15%に対し、中小企業では47.6%が1度も在宅勤務やリモートワークを実施していないと答えている。この調査結果から大都市と相対的に大企業が少ない地方ではこれ以上に在宅勤務やリモートワークを実施した企業は少ないことがわかる。
一部の大都市在住ホワイトカラーサラリーマンが「これからの時代はリモートワークだ!」といっても、現実はそう簡単に変わらないことが残念ながら浮き彫りになっている。
リモートワークを実施する企業のうち5割以上の従業員が実施するのは約50%
在宅勤務やリモートワークを6月現在も実施していると答えた企業に対し、従業員の何割が実施しているかを聞いたデータがこちらである。
最も多かったのは「1割」の21.8%だった。「5割以上」は50.9%で半数に上った。企業規模別でみると、大企業で「5割以上」と回答したのは49.4%だったのに対し、中小企業では51.6%に上った。中小企業は大企業に比べて、在宅勤務・テレワークの実施率は低いものの、実施している企業の「従業員在宅率」は大企業よりも高いことがわかった。
先ほどのデータとこのデータを組み合わせると、現在も在宅勤務やリモートワークを実施している企業のうち、従業員の半数以上が実施している企業は約16%にとどまることがわかる。
身体性を伴う企業の多くは在宅勤務やリモートワークを実施できず、実施していた企業も通常に戻っている結果、決して多いとはいえない16%に留まっている。
まとめ-選択肢の多様性と柔軟な働き方はいつ実現するのか-
本記事でみてきた調査結果は、日本の働き方がそう簡単には変わらないことを表している。そして変わったとしてもそれは一部の優良企業のホワイトカラー人材で多くの人には関係ないものとなっていることもわかる。選択肢の多様性と柔軟な働き方が当たり前になる時代は来ているのか、はたまた当分来ないのか。今後のデータを注視していきたい。