公共性とは何か?意味・例や言い換えを交えわかりやすく解説

公共性とは・インタビュー

「公共性の高い事業を」「それは公共的かどうか」など官民問わずつかわれる「公共性」という言葉。メディアでもよく耳にしますが、正確な意味を問われると意外とわからないのではないでしょうか?

公共性は大きく3つにその意味をわけることができます。

  1. 「Official」国家に関係する公的なもの
  2. 「Common」すべての人々に関係する共通のもの
  3. 「Open」誰に対しても開かれている

これら3つは文脈や主体によって意味が使いわけられます。この記事では公共性について社会学や過去の思想家の知の蓄積をもとに、意味・対義語・言い換え・事例・現代社会の課題との関連・おすすめ書籍をわかりやすく解説していきます。

公共性とは?3つの意味

公共性という言葉の意味は大きく3つにわけられます。1つ目は国家に関する公的なもの・2つ目は全ての人々に関係する共通のもの・3つ目は誰に対しても開かれているという意味です。1つの確固たる定義がないことが公共性のわかりにくさにつながっています。

以下では上記3つの用法について詳しくみていきます。もしあなたが「公共性」という言葉を使いたいけど用法があっているか分からない場合は、これら3つのどれかに当てはまれば大丈夫だと思っていいでしょう。すべてを包括する用法はなかなかありません。

公共性の意味1:Officialなもの

Officialなもの=国家に関係する公的なものという意味で公共性が使われる際は、国家が法や政策などによって国民に対して行う行動を指します。例えば「公共投資」「公教育」「公的資金」「公共事業」といった言葉が意味する公共性は、Officialなものという意味です。この場合は強制力・権力・義務などのニュアンスを含意します。

この場合の公共性に対する意味として想定されるのは「民間の私的個人」の活動です。

公共性の意味2:Common(共通)のもの

Common(共通)なもの=すべての人々に関係する共通のものという意味で公共性が使われる際は、共通の利益・財産・共有するべき規範・共通の関心ごとなどを指してつかわれます。「公共心」「公共の福祉」「公共の秩序」「公益」などの言葉はこの意味でつかわれます。

この場合の公共性に対する意味として想定されるのは「個人の利益」「利権」などです。この意味で公共性がつかわれる際は、特定の利害に偏っていないみんなの利益になるものというプラスな意味をもっている一方で、個々に我慢を求めたり同調することを求めるような団体/集合体の圧力のニュアンスをもっています。

公共性の意味3:Open/開かれている

Openなもの=誰に対しても開かれているという意味で公共性がつかわれる際は、誰でもアクセスできる空間やものを指します。公園・情報公開などの言葉はこの意味での公共性をもっています。

この場合の公共性に対する意味として想定されるのは「秘密」「プライバシー」などです。本来は万人に開かれているべきものが開かれていない状態が問題となるとき、この意味で公共性が問われます。

公共性は英語でPublicness

3つの意味で解説したように日本語の「公共性」をもつ意味の英語は多数あります。学術的には「Publicness」「Public」が用いられることが多いですが、文脈に応じて使い分けることが重要です。

公共性を言い換えると?公共性の対義語は?

公共性を言い換えると「公的な~」「社会的~」「公式には~」「パブリックには~」などの言葉がつかえます。しかしこれも上記3つの意味によって異なってくるので文脈に沿って使い分けることが大切です。

もう少し難しい言葉で言いかえると「公共圏」「公共的空間」という言い方もできます。用いる学者によって微妙にニュアンスが異なるため、どんな意味合いを含意して用いるかがポイントです。

公共性の対義語として一般的なのは「私的」「私的領域」「親密性」などです。「公私」という言葉があるように、公的な空間に対して私的な空間という意味で「私」がつく言葉が対義語として多くあります。

公共性を学ぶうえでおすすめの本

公共性に関する著作は多数出版されています。特に社会学・哲学・政治思想・メディア論などの分野で公共性は取り扱われることが多いです。

齋藤純一の公共性に関するおすすめの本

日本人の学者で長年「公共性」を論じてきたのが齋藤純一さんです。「公共性について学ぶ際に、適した入門書はどれか?」と聞かれたら、多くの研究者が齋藤純一さんの著書『公共性 (思考のフロンティア)』をあげるでしょう。入門書として『公共性』を、もう少し専門的に学びたい人は『政治と複数性』をぜひ読んでみてください。

ハンナ・アーレントの公共性に関する本

20世紀を代表する政治思想家ハンナ・アーレントは公共性の議論の土台を築いた学者です。公共性が喪失することによって社会にどのようなデメリットがあるのか、最も理想的な公共性とはどのような状況下などを取り扱っています。非常に難解な文献が多いため読む際は解説本と併せて読んでみてください。(このほかにもハンナ・アーレントは公共性を取り扱った著作が多数あります。)

ユルゲン・ハーバマスの公共性に関する本

ハンナ・アーレントの公共性の議論をよりアップデートさせ公共性を世の中に広めたのが、ドイツの社会学者ユルゲン・ハーバマスです。彼の代表的著作「公共性の構造転換」は公共性の歴史を紐解きながら熟議によるよりよい社会の成立を目指す公共性についての著作です。アーレント同様にとても難解ですが、個人的にはアーレントよりもいささか読みやすいかなと思います。

最後に-公共性がもつ意味はとても深い-

fujiwaraさんによる写真ACからの写真

公共性という言葉は1990年代までは日本にネガティブな印象を持った言葉でした。しかしここ20年30年は新しい社会をつくっていく上でとても重要な概念として多くの学者に取り扱われています。

曖昧だからこそ多様な人々が多様な社会状況に当てはめて用いているところがあるため、単純化せずに複雑なまま取り扱うことで公共性が持つ深い意味とおもしろさに触れられると思います。

KAYAKURAではこのほかにも多数、社会学用語や社会科学用語の解説記事を掲載しています。興味関心のある方はぜひ読んでみてください。

→社会とは何か?社会学の知見から簡単に定義・意味・語源などを解説
→【10分でわかる】社会学とは何か?社会学研究科の大学院生が簡単にわかりやすく解説
→コミュニティとは何か?研究者が定義と歴史をわかりやすく解説(社会学)

参考文献
・齋藤純一, 2000, 『公共性-思想のフロンティア-』岩波書店.
・齋藤純一, 2008, 『政治と複数性 民主的な公共性にむけて』岩波書店.
・ハンナ・アーレント, 1994, 『人間の条件』志水速雄訳, 筑摩書房.

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この記事を書いた人

KAYAKURA 編集部

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