食×サーキュラーエコノミーの現在-食品ロス軽減の政策や企業の先進事例から学ぶ-

食 サーキュラーエコノミー

本来、食べられるのに捨てられてしまう「フードロス(食品ロス)」日本の食品廃棄物等は年間で2.759万tにのぼり、そのうちまだ食べられるものは643万tにもなります。

日本人1人あたりにすると年間約51kg、1日あたりにすると約140g、つまり毎日お茶碗1杯分の食料が無駄になっているのです。

フードロスでなくても私たちが食べるものをつくる過程で多くの廃棄物が出ています。コーヒーの実はコーヒーチェリーと呼ばれますが、このうち実際にコーヒーに使われるのはたったの0.2%。残りの99.8%は廃棄されてしまうのです。

このような課題を解決するために、現在、政策面からもビジネス面からも注目を集めるのが「食のサーキュラーエコノミー」です。

「そもそもサーキュラーエコノミーって何?」という方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

→サーキュラーエコノミーとは?日本企業の事例やSDGsとの関連をわかりやすく解説-おすすめ本も紹介-

→【最新版】サーキュラーエコノミーがよくわかる本 おすすめ11選-日本語書籍のみ!-

政策的に推進される食のサーキュラーエコノミー

日々の生活と健康を支える食の在り方を根本的に見直し変化させるため、昨今、「食のサーキュラーエコノミー」が注目を集めています。食のサーキュラーエコノミーとは、廃棄予定の食品や廃棄されている食品を他のものに活用する仕組みを指します。

英国ロンドン市のサーキュラーエコノミー政策「TOWARDS THE CIRCULAR ECONOMY」では、5つの軸のひとつに「食品」を掲げています。

欧州委員会が2020年に発表したレポート「農場から食卓まで-欧州グリーンディール-」においても、「食料生産システムの効率化」「保管と包装の改善」「健全な消費と食品ロスの削減」「加工や農産品輸送方法における持続可能性の向上」「市民への情報提供の強化」などが掲げられています。

日本政府の第四次循環型社会形成推進基本計画においても、2030年度の2025年までに家庭系食品ロス量を半減(2000年比)させることが掲げられ、循環型社会ビジネス全体の市場規模を2000年の約2倍にすることが掲げられています。

また2019年には日本初となる「食品ロスの削減の推進に関する法律」(略称 食品ロス削減推進法)も成立しました。

その他には、オランダの首都アムステルダム市のサーキュラーエコノミー以降に関する5ヶ年政策指針「Amsterdam Circular Strategy 2020-2025」において、重点分野のひとつに「食品と有機物」が掲げられている。具体的には「フードバリューチェーンを短くする」「2030年までに食品廃棄を半減」「動物性たんぱく質から植物性たんぱく質への移行」などが記されています。

これらの政策からわかるように、いまや食のサーキュラーエコノミーは企業や個人だけでなく政策主体も積極的に指針を示す時代になっているのです。ではこれら公的機関の発表に対し、民間企業ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。

企業による食のサーキュラーエコノミーの先進事例

株式会社4Nature

株式会社4natureは、新しい循環サイクルの実現を目指したサトウキビストロー(生分解性ストロー)の製造販売などを行う企業です。

サトウキビは従来、産業廃棄物として処理されていたバガス(サトウキビを精糖化した際にでる食品残渣)とPLA(ポリ乳酸)で作られた生分解且つ100%天然成分のアップサイクル製品です。

株式会社4Natureでは、ストローを回収し、家畜排せつ物や食品のコンポストと混ぜることで堆肥化するシステム設計も目指しており、これまでは使われてすぐ廃棄されていたプラスチックストローに切り替わる質が高い生分解性ストローで食のサーキュラーエコノミーの実現を支えています。

Loop Japan

Loop Japanは、「捨てるという概念を捨てよう」というミッションのもと、循環型ショッピングプラットフォームLoopを日本で展開する社会的企業です。

Loopは、これまで使い捨て容器で販売されていた製品をリユース可能な容器で販売するほか、使用済み容器を回収し、洗浄・製品の再充填を行い再販しています。また同社はLoopを通じて使い捨てプラスチックを削減するだけでなく、使い捨て文化からの脱却を目指しています

2020年にオープンした日本版Loopではすでに小売店パートナーとしてイオン株式会社が、ブランドパートナーとして味の素株式会社、江崎グリコ株式会社、キッコーマン株式会社、キリンビール株式会社など24社が参加しています。

Too Good To Go

食 サーキュラーエコノミー

海外の事例もひとつ紹介します。Too Good To Goは、飲食店やスーパーマーケットで発生してしまった「まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物」を消費者に割安で提供しているプラットフォームです。

デンマーク発祥Too Good To Goは、いまではヨーロッパで最も知られる「反・食料廃棄」アプリの地位を確立しており、ヨーロッパ全体で2,000万人以上の利用者と3万9000軒以上のレストラン、ホテル、果物屋、パン屋、お菓子屋、スーパーなど加盟店があります。

Too Good To Goを利用する消費者のモチベーションは、本当にフードロスを削減したいという強い想いのものと、マジックボックスという買ってみないと何が出てくるかわからないというサプライズ感を楽しんでいる人がいるといいます。真面目なだけでなくある種のゲーム感が急激な拡大の要因のひとつと言えるかもしれません。

最後に-食×サーキュラーエコノミーの実現には多面的アプローチが必要-

食 サーキュラーエコノミー

資本主義・消費主義下の大量生産・大量消費・大量廃棄というリニア型(直接型)の食料システムは、現在、様々な問題を引き起こしています。本記事で取り上げたように政策的アプローチとビジネス的アプローチの両面から課題を解決していくことが求められます。

また同時に本記事を読んでいる読者一人ひとり、つまり個人による社会的アプローチも課題を解決するためには重要です。

食のサーキュラーエコノミーは、SDGsやトレーサビリティシステムとも関係する分野です。興味関心ある方は、ぜひ個人にできるアクションの一つとして以下の記事もあわせて読み、学んでできることから実践してみてください。

→トレーサビリティとは?定義や意味・システムを簡単にわかりやすく解説

→SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」とは?課題・ターゲット・企業の取り組みなどを解説!

参考資料
・総務省人口推計(平成28年度), 「平成28年度食料需給表(概算値)」
・西崎こずえ, 2020, 「「食のサーキュラーエコノミー」エレン・マッカーサー財団学習プログラム From Linear to Circular #8」.
・環境省, 第四次循環型社会形成推進基本計画.
・Founding Partners of the Ellen MacArthur Foundation, 2013, 「TOWARDS THECIRCULAR ECONOMY」.
・European Commission, 2019, 「農場から食卓まで-欧州グリーンディール-」
・City of Amsterdam, 2020, 「Amsterdam Circular Strategy 2020-2025」.
・井上美羽, 2019, 「飲食店のフードロスをレスキュー。ヨーロッパで話題のアプリToo Good To Go」.

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この記事を書いた人

Masato ito

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター研究員/講師。長野県出身。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科、日本学術振興会特別研究員を経て2024年より現職。専門は地域社会学・地域政策学。研究分野は、地方移住・移住定住政策研究、地方農山村のまちづくり研究、観光交流や関係人口など人の移動と地域に関する研究。立命館大学衣笠総合研究機構客員研究員。武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員。日本テレビDaydayやAbema Prime News、毎日新聞をはじめ、メディアにも多数出演・掲載。