アグリツーリズムとは何か?定義/意味・先進事例・市場規模などからわかりやすく解説

アグリツーリズムとは

近年、新たな観光形態が注目を集めています。その中でもSDGsや地方創生と絡めて注目されているのが「アグリツーリズム」です。

アグリツーリズムとは「都市に住む人々が、地方の農村や農場へと旅行し一定期間、滞在して農業体験や農村の文化を楽しむ観光形態」です。

アグリツーリズムは今後、成長が見込まれる産業形態です。日本のアグリツーリズムの市場規模は現在、500億円~1,000億円前後といわれており、新型コロナウイルスの流行で観光産業の伸びが鈍化していますが従来の予測では2025年までに1.5倍に達するとみられています。

本記事では観光研究で英国留学したこともある筆者が、アグリツーリズムの概要をわかりやすく解説していきます。

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アグリツーリズムとは-意味・定義-

アグリツーリズムは別名アグリツーリズモと呼ばれる新しい旅行形態の一種で、アグリ(農業)とツーリズム(観光)を組み合わせた造語です。

アグリツーリズムとは「都市部に住む人や家族が、地方の農村や農場まで旅行し可能であれば一定期間、滞在ないし宿泊し、田植えや稲刈りなど農業の現場を体験する観光形態」を指します。

英語ではRural Tourism(ルーラルツーリズム)とも呼ばれるアグリツーリズム。具体的にはファームステイ(農場体験)や農家民泊、果物狩り、農家レストラン、農産物直売所などがコンテンツとなります。

アグリツーリズムとグリーンツーリズムの違い

アグリツーリズムと混同されやすい用語がグリーンツーリズムです。グリーンツーリズムとは「農山漁村に滞在し農漁業体験を楽しみ、地域の人々との交流を図る余暇活動」のことです。

アグリツーリズムには漁村は対象にならないため、アグリツーリズムはグリーンツーリズムの一種だと考えるといいでしょう。ちなみに両方とも2030年までの目標達成を求められるSDGsの理念とも深く関わっています。SDGsについても学びたい方は、合わせてこちらの記事もご覧ください。

→【5分でわかる】 SDGs(エスディージーズ)とは?わかりやすく簡単に解説します!

日本と世界のアグリツーリズム事情

世界にはアグリツーリズムの情報をまとめたWebサイトが多数存在します。例えばアメリカのアグリツーリズム情報をまとめた「アグリツーリズム・ワールド」、オーストリアの「ファム・ホリデイズ」、イタリアの「アグリツーリズモ.it」などがあります。

日本にはいまだアグリツーリズムに特化したWebサイトはありませんが、「STAY JAPAN」「農泊ポータルサイト」のような農家民泊やファームステイの予約サイトは存在します。

アグリツーリズムの先進地イタリアと日本のアグリツーリズムを比較した場合には、以下のような違いが存在します。日本の場合は依然として、古い形態のアグリツーリズムから新たな多様な形のアグリツーリズムへの移行が遅く移行中です。また規制緩和によってアグリツーリズムのすそ野は広がりつつありますが、まだ量はそこまで増えていません。

イタリアのアグリツーリズムは、古い形態のアグリツーリズムから新しく多様なアグリツーリズムへの移行がスムーズに進行しました。その結果、イタリアでは多くのアグリツーリズムコンテンツが誕生し競争が激しくなっているため、現在は質を向上させる段階に突入しています。

アグリツーリズムの事例を紹介-近年の注目はアップデートした農泊-

アグリツーリズムの先進事例はいろいろとありますが、近年注目されているのは農泊です。従来の農泊は修学旅行の体験学習などの本格的な農業体験が目的でしたが、近年ではインバウンドや個人観光客を対象とした体験コンテンツ多めのちょっと贅沢な農泊が人気です。

例えば大分県安心院町はアグリツーリズムとしての農泊で成功している自治体です。発足から20年たった安心院町では、いまでは約60軒の農泊家庭があり年間平均売上は120万円、多い家では350万円以上と経済的にも効果を創出しています。

アグリツーリズムの市場規模はどのくらいなのか

アグリツーリズムは今後、成長が見込まれる産業形態です。アメリカ農務省の調査によれば、2007年から2012年までの間に、アメリカでアグリツーリズムに携わる農家は10,249軒から13,334軒に増え、収益規模も5億4,600万ドル(約568億円)から6億7,400万ドル(約701億円)へと、およそ23.4%も拡大しています。

この傾向は近年の世界調査でも変わらず、世界全体を対象とした調査では2020年から2024年の間に170億700万米ドルまで成長するといわれています。

日本のアグリツーリズムの市場規模は現在、500億円~1,000億円前後といわれており、新型コロナウイルスの流行で観光産業の伸びが鈍化していますが従来の予測では2025年までに1.5倍に達するとみられています。

背景には若年層の価値観が変容し「モノ消費」から「コト消費」へと変わりつつあること、出生率の減少と高齢化率の上昇による少子高齢化により従来の方法では農地や里山を維持できなくなっていること、人々のモビリティの高まりにより観光が加速していることなどが挙げられます。

コト消費への変化は近年、観光分野で注目されるSBNRという概念と深く関連します。SBNRについて知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。

→観光インバウンド・移住で注目されるSBNR(Spiritual But Not Religious/無宗教型スピリチュアル層)とは何か

最後に-アグリツーリズムを知るためにおすすめの本-

アグリツーリズムとは

本記事ではアグリツーリズムの概要と基礎情報をかみ砕いて解説してきました。アグリツーリズムについてより深く学びたい、実践に結び付けたいという方には以下の本がおすすめです。ぜひ買って読んでみてください。

タイトルである「アグリコミュニティビジネス」とは、アグリツーリズムを含む農林業とコミュニティビジネスを組み合わせたビジネスのことです。課題が多い農山村の農業分野ですが適切に観光などビジネスと結びつけることで復活します。具体的な事例を交えながら農山村の資源を有効活用したビジネスについて解説された1冊です。

イタリアの村々はアルベルゴ・ディフーゾに代表されるように、今ある資源を有効活用し村それぞれの魅力を尖らせることで持続可能な環境をつくっています。本書ではなぜイタリアの村は美しく元気なのかをテーマに、アグリツーリズムや有機農業を切り口に成功の裏側を紐解いています。

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参考資料
大江靖雄, 2010, 「農村ツーリズムの現状と政策的課題を考える-イタリア・アグリツーリズムとの比較から-」.
・TechNavio, 「アグリツーリズムの世界市場:2020年~2024年」.
マイナビ農業, 2017,「年間売上350万円の農家も。大分県安心院町に学ぶ農泊ビジネス」.
AGRI JOURNAL, 2016, 「世界中で続々! オンラインを活用したアグリツーリズム」.
日経BP総研, 2020, 「アグリツーリズム 自然と生物への触れ合いに期待高まる」.

Amazonプライム

最後に、効率よく学ぶために本を電子版で読むこともオススメします。

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などの特典もあります。社会や地域の課題を冷静に正しく分析する力は、読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、気になる方はぜひお試しください。

この記事を書いた人

KAYAKURA 編集部

これからの地域・社会・観光を考えるWebサイトKAYAKURA編集部です。編集部記事では、KAYAKURAメンバーの専門性を生かした記事や、わかりやすくまとめる解説系記事を公開しています。