近年、日本では1998年以来の第7次ワインブームが巻き起こっている。
横山さんがワイン用ブドウ園を営む長野県も、信州ワインバレー構想( 各地でワイン用ぶどうやワインの生産が盛んな長野県を信州ワインバレーとし、栽培から醸造、販売、消費にわたって統一的に力を入れていく振興策 )や各地でのワイナリーの開設などワインに力を入れている県のひとつだ。
長野県池田町出身で、大学進学と同時に大都会、東京へ出た横山さん。大学卒業後は東京で就職し、地元に帰ることなく東京で仕事を続けていた。
知識ゼロから始めたワイン用ブドウ栽培
長野県池田町出身。ヴィニョブル安曇野代表取締役。大学進学を機に状況。11年前にワイン用ブドウ生産を始めるため地元池田町へUターン。 地域の若者団体の活動へ参加したり、ワインの摘み取り体験を行ったりと地域の人とのつながりを大切にしながら父と二人三脚でワイン用ブドウ栽培を行っている。
そんな横山さんの日常が変化したのは今から11年前。父からの一本の電話がキッカケだった。
「ワイン用ぶどうを育てることになった」
最初は何のことか分からず戸惑った。当時、池田町はワイン用ブドウの栽培に本格的に乗りだすことになり、農業に精通し挑戦心もある横山さんの父に白羽の矢が立ったのだ。もともとお酒が好きだったことと、その当時、そろそろ地元に帰ろうと思っていたところだったこともあり帰郷を決意。地元に戻り父と二人三脚で行政とメルシャン( 日本最古の民間ワイン会社の流れをくむワインの製造販売を行う企業)の協力を受けながらワイン用ぶどうの栽培をスタートした。
東京で仕事していた横山さんは、ワイン用ぶどうに関する知識はゼロ。農業に精通した父は多少の知識があったものの、栽培するのは初めてだった。某テレビ局のワイン講座に通ったり、メルシャンから指導を受けたりワイン用ブドウ生産の先進地である長野県高山村での研修に行ったりして基礎を学んだ。
ワイン栽培に適した長野県池田町
幸運もあった。長野県池田町のワイン用ブドウ畑がある場所は山の斜面で日当たりがとてもよく、水はけがいい環境だった。また、池田町を含む安曇野は昼夜の寒暖差が大きく良質なブドウが収穫できる。今日まで大きな失敗をせずにやってこれた一番の要因だと横山さんはいう。
現在は、シャルドネ(白/ 適度なミネラル感とさわやかな酸味を感じられる )とメルロー(赤)二種類のワイン用ぶどうを栽培している。始めた頃からメルシャンと提携してやってきたため、毎年苗木を提供してもらい、収穫したブドウをメルシャンに出荷している。
メルローは日本ワインコンクールより銀賞を、シャルドネのワインも銅賞を与えられている。シャルドネは一般的な飲みやすい味で、メルローは濃厚でしっかりした味わいがする。
信州池田町産のワインを全国区に!
ここ最近のワインブームについて横山さんはこう語る。
「近年のワインブームでワイン農家やワイナリーが増えているのはうれしいことです。長野県安曇野市や長野県大町市にも新たにワイナリーができて、ワインバレーと呼ばれるエリアが長野県にいくつも誕生しています。この流れが続いて、池田町にもワイナリーができたらいいなと思うし、池田町産のワインが全国的に有名になってほしいです。」
ワイン用ブドウ農家を増やしたい
インタビュー後、畑を見せてもらうと整然と並んだワイン用ぶどうの木が目に飛び込んできた。「これそのまま食べてみなよ。甘いからさ!」そういって、収穫直前のワイン用ぶどうの実を一つくれた。口に運ぶと、ワイン用ぶどう独特の食用とは違う甘みが口の中に広がった。
ワイン用ぶどう農家になりたい人が少しずつ増えるのに伴い、各市町村ではブドウ畑を増設しようという動きがあると、最後に横山さんは教えてくれた。ブドウ畑を開墾するには様々な合意形成が必要であり簡単な道のりではないが、日本各地でとれたワイン用ぶどうで作られたワインを私たちが当たり前のように買って飲める未来が楽しみだ。
横山さんの畑で取れたブドウからできたワインが買える場所
横山さんの畑で取れたブドウからできたワインは、池田町の道の駅ハーブセンターで購入することができる。また、メルシャンのホームページからも購入可能である。
※本記事は信州池田活性化プロジェクト「Maple Tree」が発行するフリーペーパー『いけだいろ』の第7号に掲載されたものを改編し掲載しています。