旅行業界・観光業界に就職したい学生が知っておくべき3つのポイント-市場の今後と抱える課題-

観光・旅行業界は、21世紀に入ってから大きな転換点を迎えています。2003年に当時の小泉政権が観光立国宣言をして以降、業界全体が世界に目を向け始めました。同じ時期にインターネットが普及しオンライン上での宿泊予約やツアー予約などのOTAが一般的になりました。第二次安倍政権以降は、さらにインバウンド促進に力を入れ始め2020年に訪日外国人観光客4000万人の政府目標も達成する見込みが立ちつつあります。

とある学者はこう言いました。「20世紀は戦争と工業の時代、21世紀は観光の時代だ」と。本記事では、世界中が熱いまなざしを送る観光産業界で羽ばたいていこうとする学生が、就活で観光・旅行業界を受ける際に知っておいたほうがいい現状と課題を大きく3つにまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。

訪日外国人観光客の増加が日本の観光・旅行業界の構図を一変させている

日本政府観光局(JNTO)によると、2018年の訪日観光客(インバウンド)は2017年と比べて8.7%増えて3119万人でした。これは過去最高だった一方で、2016年から2017年と比べると伸び率は-10.6%と伸び悩んでいます。

観光・旅行業界は観光客数の時代から消費額と質で測る時代へ

ここで重要なのは、もはや訪日観光客は人数で測る時代ではないということです。あなたがスーパーマーケットの店長だったとして1日の売り上げはどのように計りますか?「今日は1000人来ました!」ではダメで「今日は100万円売れました!」と計るのが正解ですよね。これまで、成長途中だったインバウンド分野は世界12位まで人数ではきました。成熟度が増してきた今だからこそ、人数ではなく消費額や質でインバウンドを測る必要があります。

2018年の総消費額は2017年と比べて2.3%増えて4兆5189億円でした。リーマンショックと東日本大震災で1度落ち込みましたが。7年連続で過去最高消費額を更新しています。消費額の3割は中国、韓国、台湾と近隣諸国。総消費額ののうち1人あたりの消費額は15万3000円ほどと2年連続で減少。中国人観光客の「爆買い」が鈍化していることがその理由です。ただ、宿泊費や飲食費は増加しているので2010年代前半とは訪日観光客の消費傾向が変ってきているといえます。

東京オリンピック・パラリンピックは通過点 オリンピック以降の主役は地方になる

2020年に56年ぶりに東京で開催される夏季オリンピック・パラリンピック。東京都心部を中心に首都圏に多くの訪日観光客が訪れることが予想されます。不動産業界、交通業界含め社会のインフラがこの機会に変革している一方、就活生が見据えなければいけないのは東京オリンピック・パラリンピック以降、2020年以降の観光・旅行業界の姿です。

ロンドンオリンピック前後のイギリスの戦略から観光・旅行業界は学べることがある

東京オリンピックがモデルにしている2012年のロンドンオリンピックの際、イギリスを訪れた外国人観光客数は実はあまり多くありませんでした。「わざわざビッグイベントのときに混む場所に行きたくない」というのがその理由でしたが、イギリス政府はある戦略を立てていました。それは「オリンピックに人は来なくてもいい。ただ、ロンドンオリンピックをキッカケにもっと地方に目が向けばいい」というもの。

実際、ロンドンオリンピックが開催された翌年2013年から、イギリスの地方における観光客数は増えていきました。もちろん、これは政府の戦略があったからこそですが、オリンピックの一つの効果としてホスト国への旅のハードルを下げる効果があります。ビッグイベントをキッカケに日本を訪れた人たちに地方の魅力を発信し、2度目3度目の訪日で地方を実際に訪れてもらう。この流れを作っていけるかがポイントとなります。

例え、オリンピック時の情報発信がうまくいかなかったとしても、地方部へと向かう訪日観光客は増えることが予想されます。交通インフラの発展、2010年代に日本を訪れた訪日観光客による2度目以降の訪日体験(2度目、3度目以降の訪日リピーター、で首都圏ではなく地方に向かう人は多い)、モノ消費からコト消費への転換などが誘因となって地方が主役となる観光の時代が訪れるはずです。

オンライン系旅行会社(OTA)の利用者数増加で変わる業界地図

旬刊旅行新聞作成 引用元:http://www.ryoko-net.co.jp/?p=33774

訪日観光客・日本人観光客ともに、オンライン系旅行会社(OTA)の利用が2000年代から大幅に増加しています。特に、海外オンライン系サイトの日本事業展開が2010年代に加速し、従来の店舗型は厳しい状況となっています。以下の7企業(サイト)は、海外オンライン系で日本での伸び幅が高いものです。名前を聞く機会は今後、確実に増えてくるので押さえておきましょう。

企業(サイト)名本社がある国説明
エクスペディアアメリカ世界最大手。総合予約の同盟サイトを運営
トリバゴやホテルズ・ドットコムを傘下に収める
ブッキング・ホールディングスアメリカ宿泊予約世界最大手。アゴダ、カヤックなどを傘下に収める
トリップ・アドバイザーアメリカ旅行口コミ・比較サイトの世界最大手
エアービーアンドビーアメリカ民泊仲介世界最大手。総合サイトへの進化を模索中
携程旅行網(シートリップ)中国中国最大手のサイト
スカイキャスナーイギリス航空券中心の比較サイト。シートリップの子会社
アゴダシンガポールアジア圏でのシェアを伸ばす予約サイト

上記のように、ホテルや航空券など複数の商品を横断的に検索できる比較サイトのことをメタサーチと呼びます。大手がメタサーチのバリエーションを増やす一方で、新規参入はなかなか厳しいのが現状。日本企業は、海外大手サイトといかに差別化できるかがカギとなってきます。

観光・旅行業界のキーワードは「メタサーチ」「ダイナミックパッケージ」「IT技術」

メタサーチによって生み出される観光商品は、ダイナミックパッケージと呼ばれています。利用者が、目的地や出発日、希望条件などをサイトで入力し、出てきた結果を自由に組み合わせてオリジナルなプランができる商品がダイナミックパッケージです。ITやビッグデータ、AIで予約状況を蓄積分析し、価格や条件はどんどん変化。国内では、2022年4月以降、ダイナミックパッケージが周流になるといわれています。

観光・旅行業界も他業界と同じくビッグデータによるデータサイエンスの知見や人材がこれからの時代は不可欠です。文系学生が多く志望してきた業界ですが、理系学生も求められる時代に突入しつつあるといえます。もし、社会学系の学部で社会調査を学んでいる人はデータサイエンスや統計を、経営商学部系の人もマーケティングや統計を学んでおくと有利になってくるかもしれません。

まとめ-変革期の観光・旅行業界で生き残る人材になるために-

本記事でみてきたように、観光・旅行業界は大きな転換点を迎えています。サービス業であることには今後も変わりない一方、AIやロボットの技術発展、Webサービスの充実で大手がこれまでのように多くの社員を抱える時代はそう長く続かないことが予想されます。また、日本人社員にこだわる企業も少なくなるでしょう。英語が話せる日本人社員より英語と日本語が話せる外国人人材を、人より3か国語以上話せて過去のデータから最適解をすぐに導き出せるロボットを、そんな未来はそう遠くないかもしれません。

就活生は、ここまで見てきたようなことを念頭に置いたうえで、それでも観光・旅行業界に携わりたいこだわりのポイントをもって変革期の業界に飛び込んでいきましょう!

※本記事では書ききれなかったことが他にもあるので、第2弾を近日中に公開する予定です。

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KAYAKURAは「新しい地域と観光を考える」をコンセプトに、地域と地域にまつわる言葉や動向を深く考える地域考察メディアです。

この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.