なぜ「地方創生」は失敗したのか-今すぐ人口至上主義と競争主義から脱却を-

2020年、地方自治体の各種事業やまちづくりなどに携わる人にとって「地方創生」は、目指されて当たり前のスローガンとなり、その存在の是非が問われることは少なくなっているように筆者は感じる。

「地方創生」が掲げられてから約6年が経つが、1つ考えてみたいことがある。「果たして地方創生は成功しているのか?失敗しているのか?」始まって1,2年でこの問いを投げかけるのは酷だが、すでに6年もたっている。

筆者はこの問いに対して「地方創生は失敗した」と考えている。それはなぜか。実はスタート時点から、その枠組みを設定したときから失敗しているということを踏まえて「地方創生」の問題点と、微かな希望を見出す方法を考えていく。

「地方創生」が始まるまでの経緯

「地方創生」は2014年8月ごろから第二次安倍政権が掲げはじめたスローガンである。「地方創生」は急に出てきたものではなく、2013年から2014年にかけて日本創生会議・増田寛也氏らのレポート「消滅可能性市区町村」「地方消滅」による問題提起があったため、国民は広くその存在を受け入れた。

流れとしては「地方創生」を問題なくスタートさせるための周到な準備として「消滅可能性市区町村」や「地方消滅」があったと考える方が適切だろう。2014年度末になると「地方創生」は具体的な事業として補正予算が組まれ、「まち・ひと・しごと創生本部」が設置され、「人口ビジョン」と「総合戦略」の実施が決定された。

「地方創生」は競争により「勝ち組」と「負け組」を選別する

「地方創生」の目的は公式Webサイトによると次のように示されている。

「地方創生は、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持することを目的としています。」

この説明の背後には日本社会全体の「人口減少」の話がある。説明の最初も「東京圏への人口の過度の集中を是正し」と書かれていることからもわかるように、地方創生は「人口」と密接に絡む施策なのだ。

「人口が減っている自治体が多いから、人口を維持するために努力することは当たり前じゃないか」という声もあるかもしれない。しかし「地方創生」は明らかに今後日本全体として人口が減少する時代において、自治体を「人口維持できたら成功=勝ち」「人口が減ったら失敗=負け」というモノサシで測る施策である。

全体の人口が減ると予測されているのに、自治体の人口は増えるということはあり得ない。つまり自治体は「地方創生」という土俵に乗り一律の人口というモノサシで測られる限り、そのほとんどが「負ける」のである。

「地方創生」の成功失敗を数的に判断することは妥当か

「地方創生」では2015年以降、地方版「人口ビジョン」と「総合戦略」に基づく事業に対して交付金が配られている。各自治体にKPIを自主的に設定させ、達成できなければその自治体は「取組不十分」として批判されることになるだろう。いや、すでに多くの自治体で「地方創生」を掲げ頑張って取り組んでいても人口は減るばかりで、各方面から批判されている。

KPIを定めることは事業を進めるうえで重要である。しかし企業と自治体はそもそもの役割が異なる。ビジネスのロジックでKPIを定めてしまうと、自治体は無理な目標達成のために削ってはならない人員・予算を削ったり、本質的な解決につながらない表面上の成功だけを追い求めたりしてしまう。

実態を全く把握しないコンサルが総合戦略策定に絡んでいる自治体などはまさにその最たる例である。また一方でマクロな視点を持たずに過度な住民視点の強調で、専門性のない住民のみで計画を策定するのも違う。不確実性の高い未来を明るく照らす為には、住民の声も行政の声も外部専門家の声もどれも必要なのである。

「地方創生」は地方のためか、日本社会のためか

「地方創生」に対して疑問をいだくことなく「素晴らしいことだから進めよう!」と一面的な理解で取り組むことは、マクロな視点/国の狙いを見落とすこととなる。

「地方創生」は平成の大合併につづき、地方切り捨て(地方自治体を減らす)ことをできる限り円滑に「努力したけどうまくいかなかったからしょうがないね」と声をかけるためのカモフラージュである。そして同時に、地方を切り捨てようとする国の政権を、切り捨てられる側の地方自治体に支持させるという形態なのだ。

その証拠に公式Webサイトのトップには「活力ある日本社会を維持する」ことが掲げられている。つまり最終目標は日本社会全体の活力維持であり、地方自治体の維持ではない。トップの地方創生の説明には一言も「地方」という言葉は出てこない。日本社会全体にとってメリットと考えられれば、地方自治体は消滅してもいいのである。それが「活力ある日本社会を維持する」と言えるのであれば。これが「地方創生」の考え方である。

「そんなことはない!国は地方創生を本気で進めようとしているし、自分たちの自治体も地域が活性化しつつある!」という人もいるだろう。しかしどんなに質的に成功していても、住民の生活満足度や幸福度が高まっていたとしても、一律「人口」というモノサシで測られたらどうだろうか。多くの自治体は「失敗」の烙印を押されるレベルだろう。なぜなら人口が減っているからである。

本来は広域で手を取り合って真の地方創生に取り組むべき地方自治体同士を、競争の枠に押し込めることも地方創生の問題点である。「うちの自治体の人口さえ増えれば他はどうなってもいい」と言わんばかりの施策が散見される。

移住補助金を1つの自治体が増やせば、周りの自治体も増やし、さらに負けじと他の自治体が増やす。そうしてエンドレスにすり減るだけで効果が乏しくよそ者からみたら「どこも一緒」な金太郎あめ施策が生まれていくのである。数年後~十数年後、これらの自治体は誰も望まなかった合併というカタチで一緒になることになるだろう。

最後に-失敗した「地方創生」の微かな希望をつかむために-

「地方創生」は成功か失敗かと問われれば、筆者は失敗であると判断する。一部の大規模自治体と国にとっては成功かもしれないが、多くの地方自治体にとっては頑張ったのに人口は増えず箱モノが増えただけで財政的にも厳しくなった政策と後世、振りかえられるだろう。

ではどうすれば少しでも真の地方創生に今から切り替えることができるのか。1つ目は国が求める「人口至上主義」のモノサシから早々に離脱することである。人口/人数というモノサシで測っているうちは、9割5分失敗となる。施策の量から質への転換が大切だ。

2つ目は「競争主義」からの脱却である。国は競争させることで各自治体の個性が際立ちどこもうまくいくと思っているところが歴史的にあるが、体力がなくなった現在の自治体は競争すればするほど消耗していくだけである。1つの自治体ではどうすることもできない課題に取り組むためには、広域連携が欠かせない。そのためには隣接自治体との競争は早々に放棄し、手を取り合うべきだ。しょうもない過去のいざこざやプライドは捨てなければならない。

3つ目は「人口減少を前提として地域」を目指すことである。これまでの人口増社会の前提は全く通じない社会に日本は突入している。可能性がほぼ0な人口増にかけるより、早め早めに人口減に対応していくことが重要だ。

政策としての「地方創生」は失敗しても、自治体にとって真の地方創生は失敗してはならない。地方創生やまちづくりに取り組むすべての人々が、いま一度、目指す方向性ややるべきことを見つめなおすべき時が来ているのではないだろうか。

より深く「地方創生の問題点」について考えてみたい方には、以下の本をおすすめします。ぜひ読んでみてください。

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この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.