コロナ禍に急増する爆破予告-三菱重工爆破事件から考える、予告をイタズラで済まさないことの大切さ-

2020年、ある犯罪の形態がよくニュースやSNSを騒がせている。それが「爆破予告」だ。

  • 6月11日:茨城県石岡市役所に予告メール
  • 7月6日:静岡大と静岡県立大に予告メール
  • 7月8日:静岡県HPに小学校などへの爆破予告書き込み
  • 7月17日:群馬県大泉町の役場に予告メール
  • 7月19日:千葉県市原市役所に予告メール
  • 7月23日:ネット掲示板で大阪教育大への予告爆破の書き込み、その後も同志社大と立命館大への爆破予告発見
  • 7月29日:千葉市と富津市のHPに「小型爆弾3個を仕掛けた」との書き込み
  • 8月2日:高知大、高知県立大、島根大、島根県立大に予告メール
  • 8月3日:広島修道大、県立広島大に予告メール
  • 8月6日:横浜国大に爆破予告
  • 8月29日:長野県軽井沢町など複数自治体に爆破予告
  • 9月2日:早稲田大の主要建造物 爆破予告

ここにあげたのは2020年6月以降に行われた爆破予告の一部である。実際にはこれよりも多くの爆破予告が自治体、企業、教育機関などに行われている。

コロナ禍に急増する爆破予告事件

新型コロナウイルス感染症により世界中の人々が2020年に入ってから、自由な行動に制約を受けている。家から出られない時間が続いたり、非日常の生活が強制されることでストレスが溜まり鬱憤を晴らすために爆破予告している可能性が考えられる。またニュースで取り上げられるたびに、「自分もやってみよう」と思い模倣する人が発生しているためキリがなく続いているとも考えられる。

ここで1つ立ち止まって考える必要のあることがある。それは「爆破予告なんて、どうせイタズラだから建物内の人を全員避難させたり、休校にしたりする必要がない」という意見である。確かに上記に列挙した爆破予告のうち、実際に爆破されたというニュースは1つも見ない。ここに挙げたもののみならず、ほとんどの爆破予告は実際に行わることなく「ただの予告イタズラ」として終焉していく。

爆破予告が連鎖する状況にあって、「どうせ爆破されないんだから通常通りでいいんじゃない」と思う人もいるかもしれない。しかし実は過去には、爆破予告から実際に爆破され多数の負傷者を出した事件が日本でいくつか起こっている。そういった事例があるからこそただのイタズラでは済ませられないし、年配の方の中には事件を覚えていて爆破予告のニュースを見ると怖くなるという人もいるだろう。

そこでここからは爆破予告があったのち、実際に爆破事件となった日本の事例を1つみていく。この事例から「爆破予告が本当に爆破につながることがある」ということを頭の片隅に置き、いざ自分が爆破予告される立場になったときどう判断すればいいのか、爆破予告を見聞きしたときどう考えればいいのか、参考にしていただけたら幸いである。

三菱重工爆破事件は死者8名、負傷者376名を出した戦後日本最悪のテロ事件

1974年8月30日、日本の東京都千代田区丸の内で三菱重工爆破事件はおこった。犯人は第二次世界大戦以前の日本を「完全な悪」と捉えており、太平洋戦争を「侵略戦争」として憎むような思想を持つ集団 東アジア反日武装戦線「狼」であった。

「狼」の実行犯4人は、午後0時25分ごろ三菱重工業東京本社ビル1階出入り口のフラワーポット脇に時限爆弾を仕掛けた。そして午後0時42分ごろ、三菱重工ビルの電話交換手に「三菱重工前の道路に2個の時限式爆弾を仕掛けた、付近のものは直ちに避難するように、これは冗談ではない」といった内容の電話をした。

その直後、午後0時45分に時限爆弾が爆発。建物の窓は9階まですべて割れ、密を隔てて建つビルの窓ガラスや外に停めていた車、街路樹なども吹き飛ばされた。この爆発での死者は8人、負傷者は376人となり、戦後日本最悪のテロ事件となった。

この事件で大きな被害が出た理由は、威力の強い爆弾を使ったことと、爆破予告が「単なるイタズラ」と捉えられたためだった。犯行グループは守衛室へ爆破の8分前に爆破予告電話をかけたが最初は「イタズラ電話」として切られてしまった。数分後に再度かけ直したときもすぐに切られた。そして、もう一度かけて電話交換手が爆破予告を最後まで聞いたのが4分前だったが、避難処置は残念ながら取られなかった。

この事件においては、「爆破予告で直前でありそれは予告とは言えないこと」「爆破予告の際に場所や爆弾の種類を示しておらず、短時間で人を非難させたり対応することは不可能であること」などから、殺人罪が成立し2名が死刑となった。

最後に-爆破予告の情報を入手したら、まずは身の安全を確保すること-

コロナ禍に増える爆破予告の多くは、場所は示していても時間を示していなかったり、爆弾の種類まで示しているものは少ないように思われる。爆破よりもだいぶ前に爆破予告しているケースが多いことから、上記事件のように「必ずやってやる」という意思は感じられない一方、社会が恐怖を感じる時間は長いものとなっている。

ただ時間や場所、爆弾の種類を言う言わないに限らずこの事件の後に教訓とされたのは「爆破予告をイタズラとして済まさない」ということである。もしも最初の爆破予告で電話に誠実に対応していれば、残りの時間でもしかしたらなんらかの策を講じることもできたかもしれない。例えば建物から離れるよう呼び掛けたり、壁がある場所に身を隠したりするなどだである。

大前提として爆破予告は絶対にしてはいけないことである。しかしもしも周りで爆破予告が届いたら、爆破予告があるとの情報を入手したら、いたずらと捉えずに行動することが大切である。三菱重工爆破事件の時代と異なり、自治体や企業に爆破予告が届いた場合、SNSなどでその情報を瞬時に拡散することはできる。情報を入手したら野次馬根性で現場にあえて行くようなことは絶対にせず、できることをすることが大切である。

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この記事を書いた人

KAYAKURA 編集部

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