「コロナ禍のお盆 帰省」考察-オンライン帰省の割合/広まらない理由・帰省する人/帰省しない人の理由-

新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、今年のお盆は帰省自粛ムードとなっている。ANAによると国内線の予約状況は例年比で48.7%となっているほか、JRは東北新幹線の自由席は上りは例年比で30%、下りは10%、指定席でみると20%とこちらも大幅な減少となっている。また高速道路を管理するネクスコ東日本は、新型コロナウイルスの感染拡大で予測は困難な為、お盆期間の渋滞予測は見送るとしている。

このような状況下、実際にどれほどの人が帰省を考えているのだろうか。また各所から「今年のお盆はオンライン帰省を」との声もあるが、果たしてオンライン帰省は広まっているのだろうか。もしオンライン帰省が広まっていないとしたら、その理由はどこにあるのだろうか。本記事では各種調査を踏まえながらコロナ禍のお盆 帰省を考察する。

78.2%が「お盆に帰省する予定はない」と回答

リサーチ会社のクロス・マーケティングが7月14日に全国47都道府県の20~69歳の男女1100人にネット上で実施した調査によると、78.2%が「今年のお盆は帰省する予定は無い」と回答。宿泊もしくは日帰りの、移動を伴う帰省の予定がある人は20.1%となった。

帰省予定と答えた20.1%に対し「お盆の帰省で気になること・心配なこと」について聞いたところ、「公共交通機関で移動中の三密(25.3%)」が最も多かった。また一都三県の居住者に絞ると、「帰省先の近隣の人の反応」(26.9%)が上位に挙がった。これは各メディアで報じられる「コロナ差別」「コロナ村八分」のような状態になることを危惧しての回答だと考えられる。

一方で帰省予定と答えた20.1%のうち23.5%の人が「お盆の帰省で気になること・心配に思うことは特にない」と回答している。このうち28.6%は一都三県以外の居住者、11.9%が一都三県居住者となっており、感染者数が相対的に少ない非一都三県居住者の中にはコロナ禍のお盆帰省も特に問題ないと考えている人が一定数いることが判明した。

お盆だけでなく夏休みに対象期間を設定したうえで調査を行うと異なる結果も出ている。LINEリサーチが日本全国の15~59歳の男女を対象に、今年の夏休みの帰省事情について調査したところ、44%が夏休みに実家に行く・滞在する予定と回答した。次いで多かったのは「連絡すると思うが、まだ方法は決めていない(18%)」、電話(15%)だった。LINEリサーチによると電話は40代以上で高めの傾向、LINEは20代30代、ビデオ通話は30代が多くなっているという。

「オンライン帰省をする予定」と答えた人は2.1%

コロナ禍の帰省方法として「オンライン帰省」が各方面から促されているが、実態はどうなのだろうか。クロス・マーケティングの調査結果では「宿泊と伴う帰省・日帰りの規制をする予定」と答えた人が20.1%だったのに対し、「オンライン帰省をする予定」と答えた人は2.1%だった。「帰省をする予定はない」が78.2%だったことを考慮すると非常に低い割合である。

この調査結果から、「そもそもお盆になんらかのカタチで帰省するという慣習自体が薄れている」「お盆はリアルに訪れることに意味がありオンラインでは帰省といわない」「お盆の帰省が面倒だと思っていて、コロナを理由に帰省的なことは何もしない」等の人がそれぞれ一定数いると考えられる。以下では「なぜオンライン帰省は広まらないのか」を考えていく。

お盆の帰省目的で最も多いのは「お墓参りに行く」41.8%

オンライン帰省が広まらない理由は、過去のお盆の帰省の目的に関する調査からわかる。ソニー損保が2019年6月20日~6月24日の5日間、自家用車を所有して自分で運転をする20代~50代で、「今年のお盆に帰省する予定がある」男女に対し実施した、「2019年 お盆の帰省に関する調査」によると、お盆の帰省の目的はトップが「お墓参りに行く」41.8%、「親の様子を見に行く」34.5%、「のんびりする」31.9%となっている。

今日でも「お墓参りに行く」がトップを占めていることは少々意外かもしれないが、この結果からなぜオンライン帰省が受け入れられないか、広まらないかがわかる。つまり約2人に1人が「お墓参りすること」=お盆と考えている中、オンラインではお墓に行くことはできないため、オンライン帰省はしないということだ。2位以下につづく「親の様子を見に行く」「親・義親に子どもの顔を見せる」「祖父母や親戚に自分の顔を見せる」は現代ではお盆でなくてもビデオ通話などでできるようになっているため、それをやったところえお盆ということにはならないのである。

「お盆の配偶者の実家への帰省が憂鬱」な人は男性24.5%、女性は56.9%

お盆のオンライン帰省が広まらないもう1つの理由として考えられるのが、「実は一定数の人はお盆の帰省が面倒だと感じていて、コロナを理由に帰省しなくよくなって喜んでいる」という仮説である。

ソニー損保が2017年6月23日〜6月29日の7日間、自家用車を所有して自分で運転をする20代〜50代で、「今年のお盆に帰省する予定がある」男女に対し実施した、「2017年お盆の帰省に関する調査」によると、実家への帰省は「楽しみ」と答えた人が86.8%に対し、「配偶者の実家への帰省が憂鬱」な人は男性24.5%、女性は56.9%となっており、女性の半分以上が配偶者の実家への帰省を憂鬱と思っていることが明らかになっている。

「帰省の移動行程」について聞いたところ、23.7%の人が憂鬱と答えており4人に1人が渋滞などに巻き込まれる不安から憂鬱と感じている。また「親戚の集まり」についても聞いたところ35.4%が憂鬱と答えた。

オフラインで集まる場合ほどの面倒さはないかもしれないが、オンラインだったとしても配偶者の実家とビデオをつないだり、親戚とつなぐことは面倒だと思っている人は一定数いる。コロナをいい理由に「今年は帰省に値すること何もしないでおこう!」となる人たちは、そこそこいるのではないだろうか。そして今年「お盆に帰省しない」という実例が生まれたので、これをキッカケに来年以降ももしかしたらお盆に帰省しない人が増えるかもしれないと予想することもできる。コロナは意外なかたちで親族関係にも影響を与えているのだ。

まとめ-コロナ禍のお盆 帰省は来年にも影響を与えそう-

コロナ禍、「お盆に帰省しない」夏を始めて経験している人が多くいることが各種調査結果から伺える。このことは今年だけの影響に留まらず来年以降のお盆にももしかしたら影響を与えるかもしれない。親族と会う頻度がコロナをきっかけに今後も減る人もいるかもしれないし、親族との会い方に変化が生まれる人もいるかもしれない。お盆が終わった後、コロナ禍のお盆を人々がどのように振り返るのか、注目である。

参考資料
お盆の帰省に関する調査(2020年)クロス・マーケティング
「お盆の帰省に関する調査(2017年)」ソニー損保
「お盆の帰省に関する調査(2019年)」ソニー損保
LINEリサーチ、夏休みの帰省事情に関する調査を実施, LINEリサーチ

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この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.