コロナ禍 文系大学院生のリアル-研究環境・授業形態・図書館利用など-

KAYAKURA上ではあまり個人的なことは書きませんが、今日は「コロナ禍の文系大学院生のリアル」について書きたいと思います。私はいま、一橋大学社会学研究科総合政策研究分野の修士2年です。専門は社会学。より厳密にいえば地域社会学という分野です。理系文系でいえば文系に当てはまります

コロナ禍の大学生生活はさまざまなメディアが取り上げ話題となっています。授業がオンラインになったことで出席率が上がった、就活はとても厳しい、学生支援緊急給付金の枠が少なすぎる、校舎が使えないのに学費は同じなのか、などなど。

あくまで私の個人的な体験にはなりますが、この記事では文系大学院生がどのように研究をしているか、困っていること得したことは何かなどリアルを書いていきます。特に悩みの解決法などは書いていませんが、同じような境遇の方の目に触れて「うんうん、わかる~」と思ってもらえたら幸いです。

オンライン授業がコロナを乗り越える手段に収まらないことを願う

文系大学院生と一括りにしても研究に必要なものは人によって全く異なります。私の場合は研究フィールドが長野県なので4月以降は基本的に長野県の拠点に滞在していました。東京都の行き来ができないためどちらにいるかの選択は難しいものでしたが、研究フィールドの近くにいることを選択しました。

コロナによって得したことの1つが「研究フィールドにいながら授業が受けられる」ことです。社会学や人類学などを専攻する大学院生の中には、私のように特定のフィールドを国内外にもっている場合があります。本来はフィールドにできる限りとどまりたい一方で、通常は授業があるからしょうがなく都内にいなければなりません。

しかしコロナ禍は大学に行く必要がなくなったため、私は研究フィールドに長期滞在することができました。通常とは異なりフィールドにいてもインタビュー等対面の調査はもちろんできませんが、それでも身を置いていることでフィールドのリアルな動きを感じることができました。

夏休み以降もオンライン授業が続くかはわかりませんが、私のようにフィールドがある学生の多くは引き続きオンラインで授業が受けられたらと望んでいると思います。

フィールドがある人のみならず、住居や移動の関係で大学院への進学を諦めてしまう人を救う1手にもなるはずです。オンライン授業が「コロナを乗り越えるための手段」に収まることなく、大学生活において複数の選択肢から選べる環境をつくる手段になればいいなと思っています。

文系大学院生1番の悩みは図書館が使えないこと

コロナによる一番の打撃は校舎が使えないことです。オンラインのメリットについて語ってきましたが、やはりデメリットもとても大きいです。学部生とは異なり人と会う機会に関してはそれほど重要ではないのですが、悩ましいのが図書館利用です。

私が所属する大学ではコロナ期間中、はじめは図書館が閉館されていて7月3日現在は予約した本を受け取りにいくことのみできます。図書館が使えないということは、巨人の肩に乗ることはできないということです。文系の研究は特に先人たちの研究の延長線上で行われるため、これまでの研究に触れられなければ自分の立ち位置も目指すべき方向性もわからないのです。

6月頃から図書館利用が再開し、コロナ禍なので貸し出し冊数は無限、期間も無限となっています。これは嬉しいことです。しかし問題はその借りたい本を事前に選ばなければならず、本棚を見ながら選べないことです。

本が好きな方であれば分かると思いますが、どの本が自分の借りたいものであるかをタイトルと目次と筆者の情報だけで判断するのは、極めて難しいことです。パラパラめくりながら、文体や見出しも見ないとそれが本当に必要な本なのかどうかわからないのです。

また本棚を眺めることがうまれる偶然性も事前の予約では起こりえません。借りられる本は自身の予測範囲内にある本のみであり、知っている世界から抜け出し偶然の出会いを楽しむことはできないのです。文系大学院生にとって、図書館が思うように使えないのは大きなダメージです。

相談相手もいないし研究方法もわからない…ツラい文系大学院修士1年生

研究というものは、もともと孤独な作業です。しかし同じ研究室に所属する仲間と会ったり先生と会ったりする時間は、孤独を少し紛らわしてくれます。残念ながらコロナ禍ではそういう時間は生まれず、あるのは先の見えない孤独と不安です。

私の場合は修士1年を普通に過ごしたので問題ありませんが、大変なのは今年入学した修士1年生です。zoomで同じ研究室の後輩と話をすると「研究の進め方が全くわからない」「まだ入学した感じがしない」「自分の勉強法がこれで正しいのか不安だ」といった声を聞きます。

ある程度知っている間柄の先輩であればzoomで相談することもできますが、1度も学年を超えた交流がないままzoom授業になってしまったため、修士1年生はほとんどつながりがありません。つながりがない人にzoomで相談を持ち掛けるのはなかなかハードルが高いことです。この1年時のスタートダッシュの遅れは、短い修士2年間をより短く苦しいものに今後していくことになるでしょう。

質的な調査手法は難しく、量的調査や文献調査・統計調査がメインに

私は普段、質的な調査手法を用いてフィールドの実態に迫っています。質的な調査とは直接人に会って対面で話すような調査全般です。しかしコロナ禍では質的な調査手法は積極的に使えません。特に研究のために動き回っている私や、都道府県を超えて調査しに来る人に、被調査者はあまり会いたくないでしょう。

質的な調査手法が使えない場合、代替できるのはアンケート調査などの量的調査、参考文献や各種資料を読み解く文献調査、二次資料を活用した統計調査などがメインになります。

しかしアンケート調査の場合はある程度の質を保とうと思うとそこそこお金がかかります。また参考文献や各種資料は図書館や資料館が使えないため、読める文献が制約を受けます。統計調査はある程度専門的なスキルが必要なため1日2日で習得できません。

現在の文系大学院の特に社会学では、質的な調査方法が多用されています。しかし今回のコロナを経て改めて「質的な手法だけに依存するのはよくないな」と多くの研究者が思っています。少なくとも2つ以上の手法をある程度使える状態に普段からしておくことで、予測不可能性が高まる現代社会において柔軟な研究ができるのではないでしょうか。

最後に-コロナ禍 文系大学院生の悩みは尽きない-

今回紹介したのは文系大学院生のリアルのほんの一部です。生活に関することはまた別の機会に書けたらと思います。コロナによって改めて私が感じたのは、学生に対する支援や投資がいかに少ないかということ。言い換えればいかにこの国は将来を担う世代に投資をしていないかということです。

学生支援緊急給付金は大学からの情報によると通常の奨学金よりもとてもハードルが高いものになっています。本当に困っている人のもとに届くのか、困っているのに給付されなかった人はどうするのか、雲行きは怪しいです。また家賃補助や生活費補助、本を書くお金などそういった支援ももう少し充実してもいいのにな、と思いました。

社会の緊急事態はリトマス紙になります。その国が何をどの程度大切にしているのかがわかるリトマス試験紙です。コロナによって大学生活が続けられなくなった人、とても苦しい生活状況になった人、研究環境により悩んでいる人、私を含めいまを経験する人たちの声が今後、生かされより良い教育環境となっていくことを切に願います。

-ラジオ版KAYAKURA-

ラジオ版KAYAKURAは毎回1つのテーマについて5分~10分で深堀する音声コンテンツです。テーマは社会課題・最新ニュース・地方創生・観光インバウンドなど。スキマ時間の学びを思考を促す内容となっていますので、ぜひ聴いてみてください。

この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.