半農半Xとは何か-定義や事例・移住との関連・収入事情などを実践経験者が解説-

半農半X

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地方移住や新しい農業の在り方として聞く機会が多くなった「半農半X」という言葉。新しい言葉なので読み方やその意味が分からない方は多いと思います。

半農半Xとは「農業収入の他に、兼業収入を加えて生計をたてるライフスタイ ル」を指す言葉です。読み方は「はんのうはんえっくす」で塩見直紀氏が1990年代半ば頃から提唱してきたライフスタイルです。

この記事では半農半Xの定義や実践例、農林水産省の動向や地方移住と絡めた収入面のリアル、おすすめの本などを紹介していきます。

半農半Xとは・定義

半農半Xとは農林水産省によれば「農業収入の他に、兼業収入を加えて生計をたてるライフスタイ ル(兼業就農に近い)」を指します。なお定義は数多くあり定まったものはありません。

より抽象的な言葉による定義としては「持続可能な農ある小さな暮らしをしつつ、天の才(個性や能力、特技など)を社会のために生かし、天職(X)を行う生き方、暮らし方」という定義もあります。

半Xの数や業種に制限は無く、ライターやIT、酒蔵、カフェなどその選択肢は十人十色です。生まれも育ちも農村地域の人は、意識せずとも半農半Xを実践しているケースも多いです。

半農半Xという言葉は京都府綾部市在住の塩見直紀氏が1990年代半ば頃から提唱してきたライフスタイルで、塩見氏の著書『半農半Xという生き方』で一般化しました。

半農半Xの読み方は「はんのうはんえっくす」

半農半Xの読み方は「はんのうはんえっくす」です。エックスには大文字小文字の決まりはありませんが、大文字のXで記載されることが多いです。

農林水産省も半農半Xを本格的に議論

農林水産省も半農半Xを推進するために本格的に取り組みを始めています。2020年10月には座長に明治大学 小田切徳美氏を招き招集された新しい農村政策の在り方検討会が設置されました。

農林水産省は、小規模経営の参入や農業所得の安定・向上と「X」になる農村資源を活かした新たな事業の展開を両面から支援する必要性を提示しています。今後の支援拡充のための制度情報は要チェックです。

半農半Xの事例を知る

半農半X

半農半Xを実践する人は多くいますが、具体的な実践例はあまりみえてこないことが多いです。理由としては普通に企業に勤めるのと違い説明が難しいからということがあります。そこでここでは筆者が過去に聞き取り調査した人で半農半Xを実践していた2事例を紹介します。

Aさんは30歳頃まで地方の小さな新聞社で働いていましたが、結婚し子どもができたのを機に半農半Xのワークスタイルに切り替えました。Xは新聞社時代に培ったライティングスキルによるライター業、独学でみにつけたデザイン業、山登りの趣味が高じて請け負うようになった山関係の仕事など。農業はコメ作りをメインに実践しています。

Bさんは地域おこし協力隊として働いたのち、半農半Xを学ぶ実践塾に通い考え方を学びました。協力隊任期後は、地域の新聞社のライター業、コーヒー好きが高じてのコーヒーの販売、協力隊時代のつながりで行政から受ける仕事などを行っています。農業は無農薬有機農業を軸に家族で消費する分をつくっています。

半農半Xの収入事情-移住して半農半Xでダウンシフトはできるのか-

半農半Xを実践するうえで気になるのが収入です。半農半Xを語る際、収入増や立身出世ではなく生活の質の向上やWell-Beingの向上を目指すライフスタイルの人が増えており、収入減少(ダウンシフト)してでも地方移住したい人が増えているとよくいわれます。

しかしJOINの調査結果をKAYAKURAが分析した結果、地方移住に伴って世帯年収が10%より減ってもいいと答えている人は、たったのおよそ12%であることがわかっています。つまり多くの人は「地方移住してもできる限り世帯年収は減らしたくない」と考えているのです。

→あわせて読みたい記事「地方移住のお金事情を読み解く」

筆者の計算では、地方移住すると場所にもよりますが家賃、食費、税金、保険料、固定資産税などは安くなる可能性が高いです。一方で車の維持費、光熱費など地方のほうが高くなりやすいものもあります。全体で考えると地方のほうが数万円安くなりますが、移住当初は初期投資でお金もかかるので移住前と同水準は稼げるような努力や工夫は半農半Xだったとしても必要でしょう。

筆者は2年間、ブドウ園で働きながらフリーランスとして生計を立てていたことがあります。そのときは、ブドウ園週4日フルタイムで働き、週2日と空いた時間でフリーランスの仕事をし、週1日休んでいました。ブドウ園の収入は月に約10万円、フリーランスのほうは月に5万円~8万円でした。半農半Xは働く時間に収入が伴わず挫折するケースがとても多いので、計画的な実践が重要です。

→あわせて読みたい記事「地方移住の仕事事情-統計データから読み解く田舎暮らしと仕事のリアル-」

最後に-半農半Xをより深く知るためにおすすめの本-

半農半X

この記事では半農半Xについての基本的な情報をわかりやすさ重視でまとめてきました。「より深く半農半Xについて知りたい!」という方には、以下の書籍をおすすめします。ぜひ買って読んで半農半Xを実践してみてください。

半農半Xを提唱し世の中に広げた塩見直紀氏の著作の文庫版。多くの実践者の話から、天職の探し方、田舎暮らしの始め方、なぜ「農」が必要なのか、などを書いている。なお文庫化にあたり、実践者のその後の広がりが追加されているのも本書のポイント。

半農半Xの実践についてより詳細に記した1冊。音楽家、パン職人、歌手などの天職とともに、暮らしに農を取り入れ楽しく生きる人々を紹介している。Q&Aや農業研修など役立つ情報も多数掲載されている。

参考資料
日本農業新聞, 2020, 田園回帰へ本格議論「半農半X」など支援 農水省検討会.
IDEAS FOR GOOD, 半農半Xとは・意味.
農林水産省

この記事を書いた人

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Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.