本記事では、社会学、経済学などさまざまな学問で用いられる分析方法「因子分析」の概要と具体例をみていきます。地域のことを考える際にも使える手法なので、例では地域と絡めてみていきます。
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因子とは?
この言葉は「因子」と「分析」に分けて考える必要があります。「分析」のほうは、読んで字のごとく皆さんが頭に思い浮かべた意味なので飛ばします。
「因子」は、別の呼び方で「潜在変数(latent variable)」とも言います。意味は、”直接測定することが不可能なので、調査や実験などの際に、実際に測定可能な測定変数から構成される変数”のこと。何が何やらという感じですので、一つずつみていきます。
因子分析における直接測定することが不可能なものとは
”直接測定することが不可能なもの”とは、いったい何でしょうか?
これは、学力判定や知能テストを思い浮かべると分かりやすいです。様々な教科の点数を見て、それらに影響を与えている要因を考えるとします。この場合の要因は、能力といってもいいかもしれません。このときの能力とは、「社会が得意な人は記憶力がいい」とか「国語と数学が得意な人は論理的思考力がすぐれている」みたいなもののことです。
これらの記憶力や論理的思考力はテストの点数を見てもあるのかないのか、点数にどれほど影響しているのかは分かりません。つまり、このときの記憶力や論理的思考力が”直接測定することが不可能なもの”にあたるのです。
因子分析と社会学
表に出てくる結果の要因となるもっと細かい要素(隠れているので簡単には見えない)=因子を調べることで、因子と結果のつながりを分かりやすく可視化したり、表に出てくる結果から分析するのとは異なる方法で分析することを「因子分析」というのです。
首都大学東京の玉野先生の言葉を用いれば、”観察された多様な現実から、より本質的ないくつかの潜在的要因を導き出し、より効率的に全体を説明できる分析法”が「因子分析」です。
この方法は非常に社会学的で、社会学者が好きなタイプの方法です。ジンメル,G.の際に触れた、内容よりも形式を研究するのが社会学であるという考え方とリンクする部分が多くありますよね。
だからこそ注意しないといけない部分もあります。実践することによって因子が明らかになる気がするので、なんでもかんでもこの方法を試してみようという人が多くあらわれる方法でもあるのです。
補助的な因子分析
因子分析を行う際に心がけるべきことは、こちらも玉野先生の言葉を用いれば「因子分析によって初めて潜在的要因が発見できたというよりも、誰もが予見できる範囲で、納得できる要因が導き出された場合に、より説得力を持つ方法である」と考えることが重要です。ある意味、確認作業的な意味で因子分析を用いるのが効果的ということですね。
調査によって幸福感や満足感を調べたとしても、”なぜ、この地域は幸福感が高いという結果が出ているのか?””満足感を高める何かがあるのか?”みたいな部分にまで分析を掘り下げなければ、表面的なもので終わってしまいます。もしかしたら、”他の地域と比べると幸福感を既定する要因は軒並み低いのに、みんな幸福感が高いと答えている”かもしれないですし。
まとめ-因子分析の具体的な方法は別の記事にて!-
本記事では「因子分析」を取り扱ってきました。私も今回取り扱うまでは、ほとんどこの言葉の意味を知らなかったので、とても勉強になりました。