まちづくりや地域活性化、移住について様々な角度から考察するメディアKAYAKURAですが、今回は社会学の用語「弱い紐帯の強さ」という言葉に注目してみます。
「学問用語知って、意味あるの?」と思う方もいるかもしれませんが、様々な学問分野に蓄積されている用語には、課題の解決の糸口になるものも少なくありません。
大切なのは言葉ではなく、言葉が指し示すものです。地域活性化や移住を考える際に、弱い紐帯の強さは重要な視点を私たちに提供してくれます。記事の中身は最初から丁寧に読んでいくと「あぁ、なるほど」と分かる内容になっています。警戒することなく、ぜひ読んでみてください!
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紐帯とは「つながり」のこと
弱い紐帯の強さは、アメリカのスタンフォード大学で教鞭をふるうグラノヴェッター,M.が1973年に示した概念です。紐帯とは分かりやすい言葉でいうと”つながり”となります。このつながりの強さは、互いに接した時間や、情緒的な強さ、親密さ、助け合いなどによって決まります。例えば、家族や親族は強い紐帯であるといえます。同様に、同僚やクラスメートも強い紐帯で結ばれた間柄だといえるでしょう。
それに対して、弱い紐帯は”知り合い”もしくは”顔見知り”程度の間柄の人とのつながりを指します。パーティーで話した人、会社同士の交流会で一緒に飲んだ人、コワーキングスペースでたまたま隣で仕事していた人、などが弱い紐帯で結ばれた関係にあたります。
弱い紐帯は様々なメリットをもたらす
グラノヴェッターは、転職する際に誰のアドバイスや勧めがより参考になったのかを約280人に調査しました。明らかになったのは、強い紐帯で結ばれた間柄の人よりも、弱い紐帯の間柄の人からのアドバイスのほうがより参考になったということです。
家族や同僚から勧められた業種よりも、パーティーで会った人や数回しか会ったことが無い知り合いからのアドバイスのほうが転職の際には有用であったのです。
無責任だからこそ生まれる新しいアイディアを大切に
強い紐帯で結ばれた人たちは良くも悪くも、似たような環境で似たような価値観を持ち暮らしていることが多いもの。転職の相談を受けても「この人はこんな性格だから」「以前はこんな職種に就いていたから」と目新しいアイディアは生まれません。
その点たまたま会っただけの間柄、つまり弱い紐帯で繋がった人は、前提条件なしに、かつ無責任な意見を提供してくれるということ。
その結果、ひとつの業種にとらわれることなく新たなことにチャレンジしようという思いが芽生え、転職先の幅も広がり結果的に良い結果につながったのです。
強い紐帯で結ばれた間柄の人たちは自分と似たような価値観で暮らしているので、目新しいアイデアは出てきにくいが、その日たまたまあっただけの弱い紐帯の間柄の人は、よくも悪くも無責任に新しいアイデアを提供してくれる」ということです。
弱い紐帯はとても汎用性がある考え方
弱い紐帯にはとんでもなく汎用性があります。社会学の論文でも常にトップの引用数を誇ります。
例えば、高校生や大学生に対して教師はよく「いろんな社会人と会って話をしてみましょう」と言う。学生のときはこのアドバイスをめんどくさく感じるかもしれないが、弱い紐帯の強さ理論に基づけば会っといたほうがいいということになります。クラスメートや教員、家族が進めてくる大学や職種は非常に視野の狭いものになってしまうが、一度か二度会うだけの社会人は無責任に様々なアイデアをくれます。しかし、そのときにくれるアイデアは多分、高校の中にいるだけでは得られないもの。
合コンも弱い紐帯の強さ理論に基づけば結構有用です。自分の仲が良い友達のあいだだけでは自分の立ち位置もキャラクターも固定化されて動きづらくなりますが、合コンというその日初めて会っただけの相手とコミュニケーションをとることで、今まで自分でも気づいていなかった新たな側面が見つかるかもしれないですよね。
まとめ
今日はグラノヴェッター,M.の弱い紐帯の強さをみてきました。
この理論は、その後の社会関係資本研究にも広く応用され今日までよく使われる理論です。特に、インターネットが普及しSNSが広まった今、新たなカタチで弱い紐帯の強さ理論は用いられ始めています。