ローカルとは?意味は?社会学的解説-「地方」「田舎の」という意味はない-

近年、テレビ東京の人気番組「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」や一定の地域を対象にビジネスを展開する「ローカルビジネス」のように、様々な場面で「ローカル」という言葉を耳にします。

しかし、改めて「ローカルってなに?」「ローカルってどこ?」と聞かれると、案外分からないものです。分からないけれど、地域活性化やまちづくりの文脈でとりあえず使ってしまう「ローカル」という単語なのです。

本記事では、はじめに「ローカル(local)」の辞書的な意味や使い方を検討します。後半は、あまり知られていないけれど地域に関わるうえで知っていて損はない、私たちの視野を少しだけ広くする「ローカルが持つもう一つの意味」について検討します。

日本語の辞書におけるローカルの意味は?

ローカルの意味は「ある地方に限定されていること」

大辞林第三版によると、ローカルは以下のように出てきます。

  1. ある地方に限定されていること。ある土地に特有であること。また、そのさま。
  2. 名詞の上に付いて、地方の、ある土地に特有の、などの意を表す。

ローカル=「地方」ではない

地方」という単語は、首府以外の地域、国内のある一定の地域という意味を持つ言葉です。

「ローカル」=「地方」と意味を理解して使っている人もいるかもしれないですが、これは正確には間違いであることがこのことから分かります。「地方」を指す際には、英語の「region」や「area」「district」が適切です。

「ローカル」は、「限定されていること」「特定されていること」という意味を持ちます。つまり、地方全体を指すのではなく、地方の中のある特定の場所を指す場合にローカルという言葉は使われるのです。ポイントは「地方」ではなく「限定」「特定」であることがここまででわかりました。

「ローカルビジネス」という際のローカルは、地方全体対象に行うビジネスではなく、ある特定の地域に限定してビジネスを行うことを意味しています。また、ローカル路線バス乗り継ぎの旅の場合のローカルも、際限のない地方ではなく区切られ限定された地域の中で移動することを指していることが分かります。

英語の辞書におけるLocalの意味は?

Localは大きく分けて二つの意味を持つ

続いて英語の「Local」の意味についてもみていきましょう。

Google DictionallyによるとLocalは以下のような意味を持ちます。

adj   relating or restricted to a particular area or one’s neighbourhood.

noun   an inhabitant of a particular area or neighbourhood.

日本語に訳すと形容詞のLocalは、「ある特定の地域もしくはある人の近隣住民に関連するもしくは制限する」となります。

名詞のLocalは、「ある特定の地域の住民もしくは近隣住民」となります。

ローカル(local)が持つもう一つの意味とは?

Localには「近隣住民」という意味がある

ここまでで辞書におけるローカルの意味は分かりました。後半はローカルが持つもう一つの意味について考察を深めます。ポイントは、英語の辞書でローカルが持つもう一つの意味のほうです。

日本語のローカルには「ある特定の地域」に関する意味しか載っておらず、一般的にローカルという言葉を使う際にも「ある特定の地域」という意味でつかわれることがほとんどです。

しかし、英語のLocalは「近隣住民」という意味を持っています

幾何学においてlocalは「近傍」という意味を持つ

数学において、localは「近傍」という意味でしばしば使われます。数学の中の幾何学という分野では、任意の点Aを中心として任意の半径で円Pを描いたとき、円P内の点全体の集合をAの近傍といいます。(デジタル大辞泉)

定義を図にしてみました。(図1)

図1

簡単に言うと近傍は「近所」「近辺」「付近」という意味を持っています。

ある特定の点Aを中心にみたとき、その点の限られた特定の周囲の中に入っている点が近傍でありlocalであるということです。

では、一体、このローカルが持つ「近傍」という意味は、いったいどのような点で重要になってくるのでしょうか?

ローカルとグローバルの関係性

ローカルに対置する言葉としてのグローバル

現代社会において、ローカルに対置する言葉としてグローバルという言葉があります。グローバル化、グルーバル社会、グローバルビレッジなどなどこの言葉をニュースで聞かない日はありません。

グローバル化とは、文化,経済,政治など人間の諸活動,コミュニケーションが,国や地域などの地理的境界,枠組みを越えて大規模に行なわれるようになり,地球規模で統合,一体化される趨勢。

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 https://kotobank.jp/word/%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AB%E5%8C%96-181351

グローバルという言葉は1990年代に広く使われるようになりました。それに対して、ローカルという言葉は14世紀ごろから使われています。つまり、ローカルという言葉、概念のほうが圧倒的に古いのです。

ローカルは可変的である

英語のlocalが持つ「近隣住民」という意味と、数学におけるlocalが持つ意味「近傍」の二つを確認しました。この2つの意味に共通していることは、「ある特定の近くにある点を指している」ということです。

図2を見てください。点A、点B、点C、点Dがあったとき、点Aを中心にして任意の半円を描きます。図において円Pの中に入っている点は中心である点Aを除いて点Bのみとなります。この図におけるlocalは点Bのみということになります。

続いて図3を見てください。今度は、半円をもう少し大きくします。するとどうでしょうか?点Bと点Cが半円に入ったので、先ほどはlocalではなかった点Cがローカルな存在になりました

全てのものはローカルで可変的

ここで私が言いたいことは2つあります。

  1. ローカルは可変的である
  2. 全てのものはローカルである

英語のlocalが持つ2つ目の意味をベースに考えると今までとは少し違ったローカルが見えてきます。

都市に対して地方という際に、ある特定の地方を限定してローカルという言葉が使われます。しかしこれは、点Aという都市に対して点Bが地方であるという意味であり、点Bが絶対的に地方であることを意味しません。

中心が変わり半円の大きさが変われば、点Bは点Aの近傍ではなくなりますし、今までは関係なかった点Cが突如として近傍=localな存在になるかもしれないのです。

都市と地方という二項対立は地方創生、地域活性化といった文脈で多くの人がもっているフレームワークです。都市という点を中心として半円を描いた際に点Bは確かに近傍でありlocalかもしれません。しかし、点Bという地方が中心となって半円を描くと、点Aという都市は点Bの近傍となりlocalとなり、ある特定の地方となるのです。

ローカルをつなぐグローバル化

これまでの時代は各点が比較的独立していました。近傍同士が強く影響しあったり、近傍では無い点と近傍が影響しあうことはそこまで多くありませんでした。しかし、そんな点を1本のひもでアクセサリーを作るようにまとめ大きな円を作る存在が1990年代に認められ始めました。

それが、グローバル化です。関係ないものが関係している、点Aと遠く離れた点Zが知らない間につながっていてつながっていることさも分からない。これがグローバル化の正体です。

まとめ-ローカルの正しい用法からローカルの考え方がわかる-

この記事で明らかになったことを以下にまとめました。

  • ローカルは田舎を指し示すのではなく、ある特定の地域を指す言葉
  • ローカルは近しいもの、隣通しのもの、近傍をさす
  • ローカルは可変的
  • ローカルは相対的
  • 全てのものはローカル
  • ローカルをつなぐもがグローバル
  • 都市と地方の関係性は絶対的ではない

「ローカル(local)」が私たちに教えてくれたのは、「地方は絶対的なものではなく、どこに視点を置くかで変わる」「特定の地域にコミットすることは、同時に近しいものと関係する」ことです。

私たちが地域について語る際になんとなく使っている言葉はたくさんあります。地域について考えるも行き詰ったとき、コンセプトや目標を見失ってしまいそうなとき、1度立ち止まって地域を語る際に使っている言葉を深くみなおしてみるとそこにヒントがあることは意外とあるのです。

KAYAKURAでは、今後も当たり前のように使われている「地域について語る言葉」を深堀していきます。 ぜひ皆さんも、一度立ち止まり「地域を語る言葉」について再考してみてはいかがでしょうか?

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この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.