2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、個人も企業も国も達成のために努力すべき2010年代20年代の重要な目標です。しかしSDGsに関連する用語は英語だったり危機馴染みが無かったりで意味が分かりにくいものが多くあります。
この記事ではSDGsに関する会話にビジネスシーンでなったとき知らないと恥かしい最低限意味を理解したい用語をまとめました。字面は難しそうですがどの単語も比較的意味は理解しやすいのでこの機会に一気にインプットしましょう。
SDGs(Sustainable Development Goals)
SDGs(持続可能な開発目標)とは、2015年の国連サミットで採択された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17の目標とそれを達成するための169のターゲットで構成されており、SDGsに関係ない人は世界中に誰一人としていません。個々人、企業、自治体、国、全ての団体と個人がSDGs目標のために動くべき主体です。
SDGsがなぜ必要なのかを0から知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
持続可能な開発
持続可能な開発とは「将来の世代のニーズにこたえる能力を損ねることなく、現在の世代のニーズを満たす開発」と国連は定義しています。持続可能な開発は経済開発・社会的包摂・環境保護の3つの要素が融合することで達成されます。
経済開発とは経済活動によって富や価値を生み出していくことです。社会的包摂とは社会的弱者を含め誰も排除せず人権を尊重することです。そして環境保護は環境を守ることです。このどれが抜けてもダメなのが持続可能な開発なのです。
17の目標と169のターゲット
SDGs達成のために設定されたのが17の目標と169のターゲットです。17の目標はこの世界に存在する解決すべき17の課題を指し、169のターゲットはより具体的な未来の理想像を示したものです。ターゲットをみることで上位目標が何を目指しているのか、具体的に何をすればいいのかがわかるようになっています。169のターゲットはここでは挙げられませんが17の目標は大切なのでここに記載します。
- あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
- 飢餓をゼロに
- あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
- すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
- ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
- すべての人々に水と衛生へのアクセスを確保する
- 手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
- すべての人々のための包摂的かつ持続可能な経済成長、雇用およびディーセント・ワークを推進する
- レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る
- 国内および国家間の不平等を是正する
- 都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする
- 持続可能な消費と生産のパターンを確保する
- 気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
- 海洋と海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
- 森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
- 公正、平和かつ包摂的な社会を推進する
- 持続可能な開発に向けてグローバル・パートナーシップを活性化する
MDGs(Millennium Development Goals)
MDGs(ミレニアム開発目標)とは2000年に開催された国連サミットで採択された目標です。SDGsと比べて国家や公的セクターに行動を求める側面が大きいほか主に途上国の課題解決を目指す内容のため、先進国や民間企業からの注目度は低かったのが違いです。MDGsが掲げた達成目標は以下の8つ、SDGsに引き継がれたものもいくつもあります。
- 極度の貧困と飢餓の撲滅
- 普遍的な初等教育の達成
- ジェンダー平等の推進と 女性の地位向上
- 乳幼児死亡率の削減
- 妊産婦の健康の改善
- HIV/エイズ、マラリア、 その他の疾病のまん延防止
- 環境の持続可能性を確保
- 開発のためのグローバルな パートナーシップの推進
5つの主要原則
5つの原則とはSDGsの達成を目指すうえで破ってはいけない5つの原則のことです。どんなによいことをしていてもこの5つの原則を守っては意味がありません。5つの主要原則は以下の通りです。
- 普遍性:国内実施と国際協力の両面で率先して取り組む
- 包摂性:人権の尊重とジェンダー平等の実現を目指し弱い立場の人々まで誰一人取り残さない
- 参画型:あらゆるステークホルダーや当事者の参画を重視し、全員参加型で取り組む
- 統合性:経済・社会・環境の3分野の統合的解決の視点をもって取り組む
- 透明性と説明責任:取り組み状況を定期的に評価、公表する
5つのP
5つのPはSDGsが掲げる理念「誰一人取り残さない」を実現するために押さえておくべきポイントです。SDGs達成のための取り組みを行う際は5つのPを意識すると17の目標がわかりやすくなります。
- People(人間):すべての人の人権が尊重され、尊厳をもち、平等に、潜在能力を発揮できるようにする。貧困と飢餓を終わらせ、ジェンダー平等を達成し、すべての人に教育、水と衛生、健康的な生活を保障する。
- Prosperity(豊かさ):すべての人が豊かで充実した生活を送れるようにし、自然と調和する経済、社会、技術の進展を確保する。
- Planet(地球):責任ある消費と生産、天然資源の持続可能な管理、気候変動への緊急な対応などを通して、地球を破壊から守る。
- Peace(平和):平和、公正で、恐怖と暴力のない、インクルーシブな(すべての人が受け入れられ参加できる)世界をめざす。
- Partnership(パートナーシップ/連帯):政府、民間セクター、市民社会、国連機関を含む多様な関係者が参加する、グローバルなパートナーシップにより実現をめざす。
エシカル消費
エシカル消費(倫理的消費)は、消費者それぞれが各々にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うことです。劣悪な労働環境でつくられたものは買わない、希少動物性の衣服の購入を避けるなどがそれにあたります。SDGsのゴール12番目「つくる責任 つかう責任」と密接に関連します。
SDGsウォッシュ
SDGsウォッシュとは、SDGsに表面的には取り組んでいるように見えて、実際は取り組めていないもしくは持続的な開発に寄与しない行動をしているビジネスを揶揄する言葉です。本当は環境によいわけでは必ずしもないのに広告やメディアを通して環境によいように思わせる「グリーンウォッシュ」がもとになっています。
SDGsはビジネスチャンスがたくさんある世界的目標であるため数多くの企業がこぞって関連した事業を展開しようとしますが「そのビジネスは本当に貢献しているのか?」「ある側面ではよくても異なる達成目標・ターゲットからみるとよくないのではないか?」と意識することが重要です。
SDGsコンパス(SDGs Compass)
SDGsコンパスとは、2016年にGRI(Global Reporting Initiative)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)の3団体が共同で作成した企業向けのSDGs達成のための指針です。
一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク(GCNJ)と公共財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)が実施した調査によると、売り上げ規模がおよそ1000億円以上の企業のうち67%がSDGsコンパスを活用していると答えています。SDGsコンパスは企業がSDGsに取り組むうえで非常に有用な指針となっています。
CSR(Corporate Social Responsibility)
CSR(企業の社会的責任)とは、企業が組織活動をおこなうにあたり倫理的な観点から事業を通して自主的に社会に貢献することです。1990年代に使われ始めた言葉で今では本業と関係ない社会貢献活動が多くなっています。
社会的責任とは、従業員、消費者、投資者、環境、地域などへの配慮や社会貢献など幅広い内容に対し適切な意思決定をおこなう責任を指します。CSRはSDGsと似ていますがSDGsが国連が採択した目標という点で性質が異なります。
CSV(Creating Shared Value)
CSV(共創価値)とは、CSRのように企業にとって負担になるものではなく、社会的な課題を自社の強みで解決することで企業の持続的な成長へとつなげていく差別化戦略を指します。2011年にM・ポーター教授が提唱した概念で、こちらもSDGsと似ていますがSDGsが国連が採択した目標という点で性質が異なります。
PRI(Principles for Responsible Investment)
PRI(責任投資原則/Principles for Responsible Investment)は、機関投資家(資産保有者から資産の運用を引き受けている機関のこと。銀行、生保、損保など)が投資を行う際にESG(次の項目)の3観点を投資決定に取り入れることです。非人道的な方法で利益をあげたり地球にとって持続的でない事業によって拡大している企業ではなく、ESGの3観点に配慮している企業に投資を促すことで企業が持続可能な世界の実現に寄与するようにしたのがPRIなのです。
ESG
ESGとは企業経営や企業の成長において「環境」「社会」「企業統治」の3観点からの配慮が必要だという考え方です。 Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)、の頭文字を取った言葉で、ESGに配慮している企業に対しての投資がPRIによって積極的になってきたことから、投資対象である企業側も配慮に積極的になってきています。
バックキャスティング
バックキャスティングとは未来の理想とする姿から逆算していま行うべきことを考える思考法です。SDGsの実現のためには17の目標から逆算して自分たちに何ができるのかを考える流れが重要なため、現状から改善策を考え改善策をつみあげていくフォアキャスティングよりもバックキャスティングが適している場面が多くあるのです。
まとめ-世界共通言語であるSDGs関連用語は使うことが大切-
SDGsの関連用語は2030年に向けてこれからますます使われるようになります。ここにある用語以外にも関連ワードはたくさんありますがまずはこの記事にある用語を覚えビジネスシーンや日常会話で使い周りにも広めていくことが大切です。SDGsについてもっと知見を深めたい方はページ下部の記事もご覧ください。
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