選挙にメディア/マスコミが与える影響を社会学概念から学ぶ-アナウンスメント効果・アンダードッグ効果・バンドワゴン効果・沈黙の螺旋など-

「自分の意思で投票することが大切」「他の人の意見やマスコミに流されてはいけない」「マスメディアは公平な報道を選挙に関してすべき」など、選挙になるといつも選挙における自立性が問題となります。

これらの発言をする人の中には「人間は理性的ですべて自分で意見を決めることができる・他からの影響は排することができる」と思っている人もいますが、人間はそれほど理性的ではありません。実は多くの影響をメディアや周囲の空気から受けていることが明らかにされています。

そこで選挙の投票行動にメディアやマスコミがどのような影響を与えるのかを、7つの社会学用語(概念)からみていきましょう。「思ってもいない影響を実は私たちは受けている」その事実をまずは知ることが大切です。

アナウンスメント効果

アナウンスメント効果とは、選挙時に投票前のマスメディアの報道が投票結果に及ぼす影響を指します。代表的なモノとして、優勢と伝えられた候補者がさらに多くの票を獲得する場合のバンドワゴン効果、劣勢を伝えられた候補者が同情などによって事前予想よりも票を伸ばすアンダードッグ効果などがあります。

英語のannouncement effectは、経済政策の事前告知が市場に与える影響「告示効果」の意味で用いられることが多く、選挙報道に限定した用法は一般的ではない点に注意が必要です。

選挙報道

選挙報道とは文字通り「選挙に関する報道」のことです。報道とは本来、公正中立であるべきとされますが、ブーアスティン. D. Jが「ニュースが製造する現実」といったように、意図するしないに関わらず、報道が選挙結果を左右する可能性は古くから指摘されています。

 選挙報道によるバイアスの例としては以下の4つなどが挙げられます。

  • 報道機関の立場や記者の主観により特定政党へ有利な報道がなされる
  • 記者による選挙予想や世論調査によりアナウンスメント効果やバンドワゴン効果が誘発される
  • 有力候補のみを取り上げることでそれ以外の候補ついての情報が有権者に伝えられない
  • 候補者の政策よりも話題性を興味本位に取り上げる

ここ20年は従来のマスメディア以外にも情報発信が可能となっているため、新たな「選挙報道」の枠組みを検討していく必要があります。

アンダードッグ効果

アンダードッグ効果は、選挙のときにマスメディアの報道が投票行動に及ぼす影響を意味するアナウンスメント効果の1つです。マスメディアによって事前に劣勢と伝えられた候補者が有権者からの同情や劣勢挽回のための支持によって、当初の予想以上に獲得票を伸ばす現象のこと。アンダードッグとは「負け犬」を意味します。

沈黙の螺旋

沈黙の螺旋とはノエル・ノイマンによって提唱されたマスコミが世論に与える影響に関する仮説です。沈黙の螺旋は以下の3つの部分から成り立ちます。

  1. 人は孤立を恐れるので、自分の意見が多数派とおなじだと認識すれば自分の意見を公の場で共鳴し少数派と認識すると沈黙する
  2. マスコミは何が多数派の意見かという雰囲気「意見の風土」の認識に影響を与える
  3. マスコミによって多数派とされた意見をもつ人は、公の場でますます意見を表明する一方、取り上げられない意見を持つ人はますます沈黙する

人々は意見の風土を把握しているか、各党派の見かけ上の強弱によって自身の発言を調整するか、について実証的な研究が行われて仮説を支持する結果も得られました。

一方、少数派でも最後まで同調しない「ハードコア」と呼ばれる層も存在するといわれています。この仮説についてはさまざまな議論がありますが興味深い現象です。

バンドワゴン効果

バンドワゴン効果とは、多勢派がさらに優勢になる現象をいいます。これは選挙時における事前のマスメディア報道の影響を議論するアナウンスメント効果の1つです。優勢と報道された候補者に対して、有権者が投票しがちになる傾向を意味します。背景には結果から得る落胆の回避、当選に寄与したと考えたい心理が考えられます。逆の現象がアンダードッグ効果です。

なおバンドワゴンとは、パレードの先頭の楽隊車を意味し、それを見かけた人がうしろにゾロゾロとついていき、次第に列が長くなっていくイメージを指します。

世論

世論とは、社会的問題に関して人々が有する意見、およびさまざまな方法を通して表出された意見だと考えられています。世論は多義的な概念であるため、研究者や学問分野によって捉え方が異なります。世論の領域がマスメディアからインターネットに拡大し、手軽な世論調査が多用される現代においては、インターネット前と現在、そして用いつ手段などによってどのように世論が形成されるかの研究が進められることが重要です。

世論調査

世論調査とは代表的なサンプルからデータを収集することにより、ある問題に関する社会全体の意見の傾向を数量的に測定する統計的な研究手法です。現在の世論調査の形態が確立されたのは1930年代だといわれています。

最後に-自分で選んでいるようで実は様々な影響を受けている-

何気なく告示~投票まで行っている選挙ですが、本記事でみてきたようにそこにはさまざまなメディアの影響が与えられています。選挙研究が盛んになった時代と今日では異なる部分も多々あるため単純にここで解説した効果が表れにくくなっているかもしれませんが、これらの効果があることを念頭に置いておくことでよりよい投票行動につながると思います。

-ラジオ版KAYAKURA-

ラジオ版KAYAKURAは毎回1つのテーマについて5分~10分で深堀する音声コンテンツです。テーマは社会課題・最新ニュース・地方創生・観光インバウンドなど。スキマ時間の学びを思考を促す内容となっていますので、ぜひ聴いてみてください。

この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.