【社会動向レポートvol,1公開】地方移住の現状と、さらなる移住促進のために重要な3視点-AI, SDGs, MaaS-

KAYAKURAでは不定期で地域・社会・観光のトレンドを分析した社会動向レポートを公開しています。今回公開するのは社会動向レポートvol,1「日本における地方移住の現状と、さらなる地方移住促進のために重要な3つの視点~AI, SDGs, MaaS~」です。

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. わが国における最新の地方移住動向

本稿では、まず地方移住が2020年現在置かれている状況について紹介する。続いて、わが国において、今後地方移住をさらに促進するうえで重要となる3つの視点AI・SDGs・MaaSについてその意義と先進事例についてみていく。

人口の首都圏一極集中の是正と地方創生のために地方移住を促進する取り組みを国、自治体、企業がそれぞれ進めているが、人口減少、少子高齢化が急激に進む中、東京一極集中の傾向は是正されていない。過疎地域をはじめ地方において、今後はより著しい人口減少が進むと予想されることから、従来のシステムから外れ時代に即した持続可能な地域モデルを早急に構築することが求められる。

世代ごとの動向をみると若者を中心にライフスタイルや働き方の多様化が進んでおり、地方移住も量と並行して質の向上の重要性が増してきている。

東日本大震災以降の地域や人のためになりたいというソーシャル志向に基づいた移住や地方での起業、複数のコミュニティとつながりを持ち複数の拠点を持つ二地域居住や多拠点居住、ICT化の進展と新型コロナウイルス拡大防止のために広まる場所を選ばずに物理的距離を超えて働くテレワーク・リモートワークの認知度向上などが多様化の一例としてあげられる。

移住する際には受け入れ側が用意する施策や地理的条件を参考に、実現したいワークスタイルとライフスタイルをに最もマッチする地域を選択する傾向が若者を中心に高まっている。

NPO法人ふるさと回帰支援センターによれば、2018年19年と2年連続で20歳~30歳代の若者層の相談が5割を超えたが、2019年は40~60歳代の相談者が微増した。老後資金2000万円問題をキッカケに今後の生活費に不安を抱えたシニア層による生活コストを下げるための地方移住の相談が増えている。今後もさらにシニア層の移住希望者は増えることが予測される [認定NPO法人ふるさと回帰支援センター, 2020]

従来の移住から定住への流れではなく、移住を繰り返すもしくは移住せずに想いを寄せる地域である「ふるさと」と関りを持つライフスタイルも少しずつ広まっている。「これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会」が2018年にまとめた報告書では「関係人口」をさらに推し進めていく旨の報告がされており、これに沿った事業や自治体の取り組みも多数現れてきている [これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会, 2018]。

都市住民の一定数が移り住む以外の方法で農山漁村地域とかかわりを持ちたいと考えており、この層は今後の地域づくりの担い手として既存の団体や定住者と役割を分担しながら協働で持続可能な地域社会をつくっていく担い手となるだろう。

2020年上半期、世界的な感染拡大により世界経済に大きな打撃を与えている新型コロナウイルスの地方移住への影響も見逃せない。大都市圏を中心に感染拡大したことにより東日本大震災時と同じように都市のリスクを顕在化させた新型コロナウイルスをうけ、地方への移住を検討する層は拡大していると予想できる。

一方、ウイルスの拡大を防ぐための不要不急の移動制限は複数の拠点を持ちながら暮らす多拠点居住のメリットとデメリットを浮き彫りにさせた。

. 地方移住促進のために解決すべき課題

地方移住を2020年以降も促進していくために解決すべき課題は多数ある。2010年代に一気に加速した地方創生と地方移住の波に乗った人々が地方移住への関心が高い層と仮定するならば、今後はより地方移住への関心が低い層へのアプローチが必要不可欠となる。言い換えれば、地方移住に興味関心はあるものの理由があって実際には行動できていない層を動かす必要があることがわかる。

ここからは一般社団法人 移住・交流推進機構(JOIN)が2017年に実施した「若者の移住」調査と内閣府が2014年に実施した「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」から地方移住のさらなる促進を妨げる課題をいくつか検証していく [一般社団法人移住・交流推進機構(JOIN), 2018] [内閣府, 2014](図表1,2)。

図表1:「若者の移住」調査の資料に基づきKAYAKURA作成
図表2:「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」の資料に基づきKAYAKURA作成

20代30代を対象とした「若者の移住」調査によれば、移住先では求める給料水準にない25,8%、田舎の人間関係が不安23,6%、どこから手を付けていいかわからない21,2%が地方移住を妨げる要因の上位3つとしてあがっている。18歳~69歳を対象とした「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」では、働き口が見つからない41,6%、日常生活の利便性36,7%、公共交通の利便性35,9%が移住の不安・懸念点上位3つとしてあがっている。このことから、以下のような分析ができる。

  • 若者は給与に関する不安が高く、スキルが生かせて現在と同等の収入がなければ移住しない層が多い(行動力があり給与が下がってでも移住したい層はすでに多くが移住済)
  • 日常生活、公共交通の利便性に対する不安が全世代高い。特に60代以上では医療・福祉に不安を抱える人が約半数となっており生活に必要な施設へのアクセス改善が求められる。
  • 移住先での人間関係や移住検討段階で何をすればいいかわからない層は、移住に関する相談の機会が少ないと考えられる。また定住を見越した移住ではなく、おためし移住や関係人口として地域とつながるようなライフスタイルの実現がまだまだ難しい状況にある。

一部の課題を抜粋したが、他にも地方移住をさらに促進するために超えるべき障壁は多数存在する。3からはこれらの課題を解決するために、地方移住に導入することで可能性が広がる3つの視点を提案する。

. 2020年以降さらに地方移住を促進するうえで鍵となる3つの視点

2020年以降、地方移住を促進していくためには現在抱える課題を解決する技術や視点との組み合わせが不可欠となる。ここからは、地方圏でのより著しい人口の低密度化に伴うリソースの減少を補うAIの活用、持続可能な地域社会をつくるためのSDGs、さまざまな課題と連関する移動をアップデートするための概念MaaSの3視点から地方移住が今後解決すべき課題と先進事例をみていく。


KAYAKURAの社会動向レポート

新しい地域と観光を考える KAYAKURAでは、不定期で現代社会の課題と動向を伝える社会動向レポートをリリースしています。対象は地方創生・地方移住・観光・インバウンド・ライフスタイル・働き方と多岐にわたりますが、一貫しているのは「今を正しく分析し、未来の希望あるソリューションと提案を行う姿勢」です。二次利用可のレポートですので、ぜひ職場で大学で地域でご活用ください。

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この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.