本記事で取り扱うのは「AGIL図式」です。パーソンズ,T.は、アメリカ社会学の大家です。そんなパーソンズが、あるシステムを分析するための発見的な概念用具として示した図式がAGIL図式です。
パーソンズは、図式魔と呼ばれるほど様々な図式を作り一般化していますが、そんなパーソンズの図式の中で最も知られている図式の一つがこれになります。社会学用語の中でも難解なものの一つですが、分かりやすく整理しながらみていきましょう。
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AGIL図式のシステムにおける4つの要件
全てのシステムには、満たさなければならない4つの要件があるとパーソンズは言います。
- 適応 Adaptation
- 目標達成 Goal attainment
- 統合 Integration
- 潜在的な型の維持 Latent pattern maintenance
AGIL図式の4つの要件は2つの基準によって分けられる
これら4つの要件は、さらに2つの基準によって分けられます。
- その機能がシステムと外部の環境との間に関わるか、それともシステム内部の諸要素間の関係及びそのシステム全体との関係に関わるか
- 目的それ自体の遂行的選択に関わるか、それとも道具的か
この2つの基準に沿って先ほどの①~④を分けると以下のようになります。
- 適応=外部的で道具的
- 目標達成=外部的で目的的
- 統合=内部的で目的的
- 潜在的な型の維持=内部的で道具的
AGIL図式と関連するパーソンズの弟子ベイルズの小集団に関する実験結果
ここで新たな人物ベールズ,R,Fの登場です。彼は、アメリカの社会学者でパーソンズの弟子にあたります。ベールズは、とある実験の結果、小集団が課題解決する際には、あるパターンが=流れがあることを発見します。
- 課題の方向性を定め認識する
- 直接、課題解決を実行する
- 白熱する議論をまとめるための連帯が問題になりだす
- 集団課題が任務と情緒の両面で解決されて満足する,緊張がとける
という順序があることをベイルズは発見したのです。
これをみたパーソンズは先ほどのAGIL図式を思いついたのです。では、早速、先ほどまで何が何やら分からなかったAGIL図式をベイルズの実験結果とくっ付けてみましょう。これがある種の具体例となります。
A(適応):課題の方向性を定め認識する
G(目標達成):直接、課題解決を実行する
I(統合):白熱する議論をまとめるための連帯が問題になりだす
L(潜在的な型の維持):集団課題が任務と情緒の両面で解決されて満足する,緊張が解ける
というように、対応し進んでいくのです!
ポイントはこれら4つは相互に依存しどれか一つに力がそそがれればその他3つに注がれる力は減少するということです。その結果、A→G→I→Lという流れが出来上がるのです。
まとめ-AGIL図式は現代においても有用か?-
本記事ではAGIL図式についてみてきました。正直言って、いまの時代にこの手のグラウンドセオリーは汎用性がどこまであるかなんとも言えないですが、様々な事象に当てはめて考えてみるとおもしろいかもしれません。今でも全く使えない理論ではないはずです。
AGIL参考資料
・現代社会学辞典
https://www.amazon.co.jp/%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E5%AD%A6%E4%BA%8B%E5%85%B8-%E5%A4%A7%E6%BE%A4-%E7%9C%9F%E5%B9%B8/dp/4335551487
・社会学の基礎知識
https://www.amazon.co.jp/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E5%AD%A6%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E7%9F%A5%E8%AD%98%E2%80%95%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E6%A6%82%E5%BF%B5%E3%81%AE%E7%90%86%E8%A7%A3%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB-%E6%9C%89%E6%96%90%E9%96%A3%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-626-%E5%A1%A9%E5%8E%9F-%E5%8B%89/dp/4641083533