Skima信州主催「スキマな地域の情報発信講座」から考えたこと①

Skima講座

7月20日、長野市のイベントスペースENKAI(縁会)で、ローカルWebメディアSkima信州が主催する「スキマな地域の情報発信講座」が開催された。

講師のプレゼンやトークセッションでの言葉を通して地域の情報発信の現状とこれからについて考察したことを、これから複数回に分けて掲載する予定である。

株式会社ニッポン手仕事図鑑代表 大牧圭吾氏

大牧氏
株式会社ニッポン手仕事図鑑代表 大牧圭吾氏

ニッポン手仕事図鑑は「ニッポンの手仕事を、残していく」をスローガンに2015年にオープンしたメディアである。動画での発信を得意とし、全国津々浦々の手仕事を日々オンライン上で発信している。

ニッポン手仕事図鑑を運営する株式会社ニッポン手仕事図鑑の代表が、今回のイベントの1人目の講師である大牧圭吾氏。前職はコピーライターで現在は様々な動画のプロデュースを手掛ける傍ら、講演講師としても全国を飛び回っている方だ。

本記事では、大牧氏の30分間のプレゼンを基に考えたことを記していく。

ニッポン手仕事図鑑で大切にしている6つのこと

大牧氏は、ニッポン手仕事図鑑を通して情報発信するうえで大切にしている6つのことがあるという。

  1. おもしろいを共有する
  2. 地道を大切に
  3. 日本初を作る
  4. ライバルをパートナーにする
  5. 接触頻度を増やす
  6. 「スローガン」を決める

ニッポン手仕事図鑑が大切にしている6つのことから情報発信を考察

情報発信と一口に言っても、「何のために」「誰に対して」「何をターゲットに」行うのかでその方法や魅せ方は全く異なる。それは、情報発信が「目的」ではなく「手段」であるからだ。

限られた情報発信により大衆=マスが誕生した20世紀

現代は「多様性」の時代である。20世紀は、テレビ、新聞、ラジオなど情報の発信方法が限られていた。当時は、テレビチャンネルは6つ程度、新聞も大体の家庭が購読していてその種類は6つ程度、ラジオに関しても周波数が同じなら全国どこでも同じ内容を聞くことができ多くの人が同じ情報を同じ情報元から摂取していた。

「昨日のダウンタウンの番組見た?」「この前オールナイトニッポンやばかったよなぁ」こんな会話が成り立つのは、みんなが同じものを見ている時代である。20世紀は、マスメディアが普及し皆が多くの人が同じ情報を摂取し、その情報を基にコミュニケーションできた時代だったのだ。

情報の受け取り方が多様化しマスが分解し始めた21世紀

20世紀と比較した場合に、21世紀は20世紀に誕生したマスが情報の受け取り方が多様化したことによって分解し興味関心の方向性がバラバラになり始めた時代といえる。

テレビ、新聞、ラジオなどの従来型マスメディアから情報を入手する人もいれば、Facebook、Twitter、InstagramなどのSNSから情報を入手する人もいれば、Webメディア、Youtubeなどオンライン上の様々なプラットフォームから情報を入手する人もいる。

このような時代には、20世紀と異なり「みんな=マスに刺さる情報発信」を行うことは難しく「○○が好きな~歳代でTwitterを使っている人に向けた情報発信」というようにターゲットが細分化していくのである。

ニッポン手仕事図鑑が大切にする6つのことには21世紀型情報発信の極意が詰まっている

大牧氏があげるニッポン手仕事図鑑で大切にしている6つのことを再度確認してみる。

  1. おもしろいを共有する
  2. 地道を大切に
  3. 日本初を作る
  4. ライバルをパートナーにする
  5. 接触頻度を増やす
  6. 「スローガン」を決める

おもしろいを共有する

1の「おもしろいを共有する」が21世紀型情報発信で大切な理由は、「おもしろさ=興味関心が細分化している」からである。情報の発信方法と受け取り方が多様化した結果として、マスの興味関心はより細く深く多様化しているのだ。

これはTwitterを代表とするSNSに見て取れる。インターネット活動家のイーライ・パリサーが生み出した「フィルターバブル」や社会学者の宮台真司氏の「島宇宙化」といった言葉が示すのがこの現象だ。興味関心の対象が細分化=たこつぼ化した結果として良くいうと「自分と同じ興味関心を持った人とのつながりが強くなりより自分にフィットした情報が入手できる」、悪い面からいうと「各々が自分がみたいものしか見なくなり、異なる考え方や文化を持つ人々の意見に寛容でなくなる。各々の考え方の視野が狭くなる」といえる

しかし、上記のプラスな面から「おもしろいを共有する」を捉えると、興味関心の対象が異なる時代だからこそ、逆におもしろさが共有できる人とのつながりが強くなるといえる。「まわりの人は、僕が好きな伝統工芸について全く興味がないみたいだけど、隣のクラスの○○君は伝統工芸の話ができて楽しいなぁ」みたいに、「好き」や「おもしろい」を感じるポイントが共有できる人やメディアとはつながりが深くなっていくのである。

日本初をつくる

3の「日本初を作る」も、1と同じロジックで説明できる。興味関心が多様化している時代には、おもしろさが共有できるコミュニティ一つあたりのサイズは小さくなっていく。しかし、コニュニティの中で有名になるとそれは「ファン」の中で圧倒的な支持率を誇るようになるのだ。

「伝統工芸の動画メディア!」とニッポン手仕事図鑑がいったとき、同じことをしているメディアは全くなかったと大牧氏いう。だからこそ、伝統工芸に興味関心ある人や動画で日本文化を発信する人を取材したいメディアは、全てニッポン手仕事図鑑に集まってきたのだ。そして、その情報はコミュニティやファンの中で共有されさらに広く伝わっていくのである。

「日本初をつくる」は、少し言い方を変えると「1番最初に名乗る」となるかもしれない。質がある程度伴っていることが必須条件ではあるが、興味関心が細分化している時代だからこそ、一番最初に名乗った人がその道のトップランナーになれるのである。

ライバルをパートナーにする

興味関心が細分化した21世紀にライバルと争うことは全体が疲弊することになる

4の「ライバルをパートナーにする」も、1,3の内容と深く関わってくる。興味関心が多様化しているということは、裏を返せば細分化したコミュニティ内の質や凝集性は高くなっているといえる。質や凝集性が高まると何が起こるか、それは自分と同じ発想を持った人や同じビジネスモデルを考え付く人がその中で出現する可能性が高くなるのである。

「出現したライバルはつぶしてでも自分たちが勝ちにいく」これが20世紀型だとすると21世紀型は「ライバルをパートナーにする」といえるだろう。そして、21世紀型のほうが細分化した時代には合理的で両者にとってプラスになる。小さなサークルの中での争いが起こると、サークル全体が疲弊しその分野自体が右肩下がりになりかねないからだ。

興味関心が細分化し、各コミュニティ、サークルが小さくなった現代においては、個々が自分にとって合理的な選択を行うと全体として非合理になることがしばしばある。しかし、個々が自分のことだけではなく競合他社やライバルと連携してコミュニティ全体を盛り上げようとすると、結果的に個々の利益も増え全体としての満足度も高まり合理的な結果に繋がるのだ。

ニッポン手仕事図鑑の大牧氏の話もまさにこれにあてはまる。「伝統工芸」「動画メディア」「地域をよりよくする」「技術をアーカイブする」こういった細分化された分野の中で互いに争いつぶし合うのではなく、一緒に協力していくことで結果的に分野全体が盛り上がり、分野外からみたときにも「最近、伝統工芸盛り上がってるよね!」となるのである。

まとめ

おもしろいを共有できる人と争うのではなく連携する、これが21世紀型の情報発信でありビジネスモデルだろう。次回は、2人目の講師TURNS編集長の堀口正裕さんのお話から考察したことをまとめたいと思う。

-ラジオ版KAYAKURA-

ラジオ版KAYAKURAは毎回1つのテーマについて5分~10分で深堀する音声コンテンツです。テーマは社会課題・最新ニュース・地方創生・観光インバウンドなど。スキマ時間の学びを思考を促す内容となっていますので、ぜひ聴いてみてください。

この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.