寡頭制(一部の人が多数を支配する体制)は、政治体制の種類を表す概念で、少数者による支配を否定的に評価する際に用いられます。分かりやすく言うと、「一部の人が、多数を支配するのってよくないよね」となります。本記事では、寡頭制の基礎を押さえつつ、実際の例を出しながら寡頭制を解説していきます。
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寡頭制の歴史-貴族制や革命のとのつながり-
この考え方自体は古代ギリシャの政治経験の中ですでに形作られていたようで、プラトンやアリストテレスはこの概念を用いて富裕者層による支配を表し、その後現れてくる優れた少数者が自分たちの利益ではなく全体の利益を考えて支配する貴族制と対比されるようになります。
その後も、少数者が全体を支配し一般大衆の不満が募った際には少数者非難の根拠となったり革命の正当性を担保するものとして寡頭制の概念は用いられてきました。
寡頭制の鉄則(支配の鉄則)-民主主義とのつながりと批判-
しかしながら、時代が進み20世紀になっても民主制において一部の少数者が全体を支配し権力が集中するという構図は変わっていません。というより、避けがたいものとして認識され始めるのです。
このような議論を踏まえ、R,ミヘルスは「寡頭制の鉄則」という考え方を示します。彼は政党の事例研究をもとに、それをさらに組織一般に拡大して、大規模化は集権化などの官僚制化、少数者支配をもたらされざるをえないというのがそもそもの含意であると説明しました。
寡頭制の鉄則を地方公共団体を例に説明してみる
これを日本における地方地域の実態と照らし合わせて考えてみます。地方公共団体は、2000年代以降の国の政策も相まって自治=自分たちで自分たちのことは決めるという姿勢で政治や行政運営に臨もうとしてきました。しかし、人口減少による税収減少や高度経済成長期に整備したインフラの再整備必要性の高まりなど、お金は無いけどお金がかかるという状況に地方公共団体は直面しています。
そんなときに頼るのが国庫支出金や地方交付税交付金などの、国からのお金です。頼るというと聞こえはいいですが、もう少し厳しい言葉を使えば、依存しているとも言えるでしょう。
すると、どうでしょうか?地方公共団体の自立や自治を高めようと国が手を引いていった結果、自分たちで補わなければならないものが増えたけどお金は無いので、結局国からのお金に依存することになる。そして、国のお金、もしくは県のお金に依存するということは、そこに歯向かったらお金が来なくなるかもしれないので支配されるしかない。そんな状況に陥るのです。
寡頭制まとめ-政治学におけるエリートの議論とも関連-
このほかにも、様々な組織で寡頭制の鉄則は当てはまります。例えば、政治学において議論されてきたエリート制とも寡頭制はつながってきます。ぜひ、みなさんも、自身の周辺環境に寡頭制の概念を当てはめて考えてみるのも面白いかもしれません。そして、それが果たしてどのように作用しているのか、組織にとって良いことなのか、それとも悪いことなのかもう一度考えてみることが大切だと思います。
寡頭制 参考文献
・社会学
https://www.amazon.co.jp/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E5%AD%A6-New-Liberal-Arts-Selection/dp/4641053707